生産者一人ひとりに寄り添い、自由な発想でフレッシュなアイデアを
入社してすぐにプロジェクトリーダーを任され、ゼロから企画を生み出している大石さん。元々は新卒で銀行に入社し、窓口と融資業務を行っていたといいます。
「内務が多くて、成長の実感や自分の介在価値を感じにくかったんです。なんだこの時間はって思うこともあって、若いうちに汎用的なビジネススキルを身に付けたくて転職しました。」
人や事業者の間に入ってプラスの価値を生み出す仕事に関心があった大石さんは、リクルートのグループ会社でホットペッパーの営業を約四年間続けたのち、ひょんなご縁から富山中央青果に入社することになりました。
「ずっと現場作業員の募集しかなくて興味がなかったのですが、新しく企画営業部を設立するタイミングがあって。ただ物を流す作業だけじゃなくて、商品化やマーケティングの仕事をやってほしい、かついま手をつけられていない地産地消を推進してほしいというオファーをもらい、入社を決めました。」
同じチームの松原菜緒(まつばら なお)さんは、今年新卒で入社したばかり。大学では管理栄養士の勉強をしていて、富山に戻って就職をしたいと考えていたそうです。「富山の魅力はなんだろう」と考えていたところ食材に興味を持つようになり、最終的に富山中央青果で働くことに決めました。
そんなフレッシュな顔ぶれの企画営業チームは、生産者一人ひとりの現状と課題を把握するため、これまでに実に100件以上の県内農家に足を運んできました。
最近とくに注目しているのは、新たに農業をはじめた新規就農者。若手農家は技術と経験がまだ身についていないため、生産物の質も量もコントロールし切れないのが現状です。「作ることに一生懸命で、販路の計画を立てられていない」と大石さんは指摘します。
「若手農家さんの場合、どんな生産物が出来上がるか想定しづらい中で提案をしていかなければいけない。かつどんなものが出来てもちゃんと売ってあげないと続けられない。まだ生産技術が整ってない彼らをどう救えるかということを考えています。」
農家さんとの対話を繰り返してきた大石さんが意識しているのは、生産者によって異なる課題に丁寧に寄り添い、一人ひとりに最適なプランを考案すること。そして消費者や販売者との最適なマッチングを生み出すことだといいます。そのためにも、農家さんの元へ自ら足を運び、彼らの声に耳を傾けることを大切にして取り組んでいるのだと教えてくれました。
他業種とのコラボレーションで新たな価値を生み出す
とやま未来青果塾では、農家さんの生産物を六次産業化する取り組みを進めています。「六次産業化」とは、生産者(一次産業)が加工(二次産業)や流通・販売(三次産業)も行い、事業を多角化すること。この一年間で、規格外品のフードロス削減を目的として、いくつかの商品が開発されました。
射水市の小松菜と入善町のプチヴェールを舟橋村のお米と一緒に加工したクッキー「おこめとおやさい」。子どもが夕食前に小腹を空かせて食べても栄養が摂れるし、むしろ夕食を一品減らしても大丈夫というねらいで作られています。他にも、ミディトマトの規格外品をドライフルーツ専門店のクノップとコラボレーションたり、「県産スムージー」をテーマにVIVA JUICE SHOPと協働して特製スムージーを商品化したりと、他業種・他ブランドと連携しながら新たな価値を生み出しています。
さらに、スーパーの産直化の取り組みでは、これまでバラ売りしていた野菜をパッケージングしてブランドロゴを付けて販売を開始。また、イベントへの出店にも力を入れており、生産者がどんな想いとこだわりを持って作っているのかということを消費者に代弁する場を設けるようにしています。まさに生産者の元を直接訪れて想いを共有しているからこそできる取り組みだと言えるでしょう。
「商品だけを売るのではなく、ファンマーケティングという観点で消費者に農家のファンになってもらって、“あの人の野菜だから買いたい”につなげることを目指しています。」
生産者の声を聞き、ゼロからプロデュースを行うとやま未来青果塾のプロジェクトは、アイデア次第でどこまでも広がっていくに違いありません。伸び代ナンバーワンの富山県で、一緒にそのノウハウを学びましょう。