仕事旅行づくりを手伝ってくれている編集職人の皆さんが、みずから仕事旅行を体験。そこで学んだこと、感じたことを自分の言葉で直球レビューします。旅選びのご参考に。
自分の思いを形にしたい
「自分が考えたモノが形になり、それで生活していきたい」
私はそんな思いを抱いていました。
他人のモノにはない、自分だけのオリジナル。更にその商品がみんなにも喜んで使ってもらえるかもしれない。
でも、そんなアイデアはどのようにして生まれるのか? アイデアを形にするには、どうしたらいいのか?
そんな疑問から、今回「彫金作家になる旅」に参加しました。
今回の旅先があるのは、小田急相模原駅。
買い物客でにぎわう商店街を抜けてすぐのところにお伺いするお店があります。迎えてくれたのは、本日の旅を案内してくれるオーナーの大塚貴さん。ご夫妻で「シルバームーン彫金工房」というハンドメイドアクセサリーのお店を経営されています。
大塚さんは、大学を中退後、ジュエリーカレッジでアクセサリー制作を学び、シルバーのメーカーに就職。メーカーで経験を積んだ後、お知り合いの方の会社でさらに彫金技術を磨き、開業に至りました。
ガラス張りの店内には、豊富な種類のハンドメイドアクセサリーがずらり。どのアクセサリーにも微細な表現がなされており、それらが手作業で作られていると聞くと驚きです。
また、こだわりは価格にも。高すぎず、安すぎず、適正な価格で提供することも大切にしているとのこと。
この旅では実際に自分が考えたデザインのシルバーリングの制作体験ができます。
シルバーを溶かし、棒状にした上で曲げ、研磨して自分がイメージした指輪に成形していきます。今回、私は、螺旋状の指輪を制作しました。自分で考えたモノが形になっていく行程が見られる、なかなか無い体験です。
気負わずに日常使いできる自然体のアクセサリーを
大塚さんは、指輪やネックレス、バンクルなどを含めて年間に10種類ほど新作を出しているとのこと。
そのアイデアはどこからくるのだろう?
うかがってみたところ、元々、幼少期から葉っぱや花、虫といった自然のものが好きで、そうしたモチーフから着想を得ることが多いそうです。
お店に並んでいる作品には、葉っぱや花、工房のロゴにもなっている月など「自然」をモチーフにした作品が多く、とてもやさしい雰囲気があります。
ひらめいたアイデアは、大塚さんの手元に置いてある小さなノートに、ひらめいたその時にメモを取られているそう。未だ形にならない作品がそのノートにはたくさん詰まっています。
それらアイデアを具現化する際のお話もうかがってみたところ、「手作業でないとデザインの細かさが出せないんですよ」とのこと。
一部機械での作業もあるようですが、ほとんどの作業を手仕事で行っているそう。
作品一つ一つに思いやこだわりを込めて作っているからこそ出るやさしい雰囲気を、お店に足を運んだ人は感じることができます。
アイデアというと、全く新しいモノを生み出さないといけない、と少し難しく考えていましたが、昔から好きなもの、身の回りにあるものが、実は発想のヒントになっていると知ると、私も話を聞きながら少し気持ちが楽になりました。
そして、自分自身のアイデアをメモに残し、それが蓄積され作品作りの財産になっていく。思いついたらすぐ手を動かす、これもまた学びになりました。
仕事の秘訣はまず‘‘受け入れる‘‘こと
「元々は開業をするつもりはなかったんです」
大塚さんは前職のシルバーメーカーを退職後、働き口に困っていた際に、知り合いの会社の一角を貸してもらい、そこでご自身の作品作りをされていたそうです。その小さなスペースで制作をしていく中で、作品の売上が上がり始め、開業に至ったとのこと。
そのような経緯で経営されている中で、大塚さんは「来るものは拒まないんですよ」と優しく話されます。
毎年、学生インターンシップの受け入れをしており、最近だと金沢にお住いの学生の方から問い合わせが。頑張る学生のためにと、インターンシップ生を受け入れています。
また、店舗スペース真横にある工房に目を向けているお客さんには、「どうぞ見てください」と声を掛け、工具や機械を紹介することもあります。ある時は、お客さんから「制作体験教室を開いてほしい」とお話があり、それを快く受け、現在も定期的に体験教室を開かれているそう。
開放的であるからこそ、お客さんとの会話が弾み、時には新しいサービスを開始するまでに。
今の大塚さんの「来るものは拒まず」という姿勢は、大塚さん自身が誰かに手を差し伸べてもらえた経験があったからこそではないかと思いました。
拒まずに一度受け入れてみる姿勢は、何かチャンスをつかむ、新しい発想を得る、など社会人として働いていく中でとても大切な要素だと再認識でき、大きな学びとなりました。
何か新しいものを作りたい、自分らしい働き方について考えている、そんな方々にとってこの旅には何か手掛かりになるものがあるはずです。
記事:土井大期(編集職人)
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