仕事旅行づくりを手伝ってくれている編集職人の皆さんが、みずから仕事旅行を体験。そこで学んだこと、感じたことを自分の言葉で直球レビューします。旅選びのご参考に。
iPhoneにしても、人間関係にしても、これまでの人生、モノを壊さないように細心の注意を払って生きてきた。
そんな私が今回、「瓦割り屋になる旅」に参加したのだが、たとえ「瓦割り」と言えども、壊しちゃってごめんね。という申し訳なさというか、後ろめたさを感じてしまう。
ポジションに入って、覚悟を決める。立ち位置を計り、どっしりと構えている瓦たちと正対すると、その重みに圧倒される。「割れるもんなら割ってみろ」そんな声が聞こえてきそう。
うりゃ~!と拳を振り下ろすと、一瞬脳内に閃光が走る。足元には潔く砕けた瓦たちが散乱している。なんだ⁈この突き抜ける爽快感は⁈
ハハハとかフフフとか、なんて楽しそうな会社!
今回私が伺ったのは、浅草で瓦割りを体験できる「瓦割りカワラナ(※以下、カワラナ)」さん。花やしきからの歓声が聞こえてくる路地に面して構えられた店舗は、美しく積み上げられている銀色の瓦が、独特の雰囲気を醸し出しています。
メディアやSNSで数多く取り上げられている事もあり、浅草散策のついでに立ち寄るというより、「カワラナ」を目指して訪れるお客様が圧倒的に多いそうです。
伺った当日も、「東京に行ったら絶対来ようと思ってた」という親子連れや、事前に調べてきてくれた外国人女性の方など、割る気モードのお客様ばかり。
腕試しの空手経験者や、ちょっとスッキリしたい人、願掛けで割っていく人など、動機は様々。でも、カワラナの魅力は瓦割りだけではないのです。
代表の川口民夫さんは、会社勤めをしながら2016年に副業で合同会社を立ち上げ、「カワラナ」のサービスをスタート。現在では合同会社ハハハ(楽しく暮らす人を増やす会社)、合同会社フフフ(健康に暮らす人を増やす会社)をはじめ、居合切りが体験できる「居合抜刀カタナバ(以下、カタナバ)」や読書会など、楽しいことを軸に様々な活動に取り組んでいる、「人を巻き込んで楽しいことを企む達人」だ。
ハハハとかフフフとか、なんて楽しそうな会社!
この仕事旅行の参加特典は、人生の楽しみ方を教えてもらえることかもしれない。やりたいことをどうやって形にすればいいのか悩んでいる人、本業とは違うやりがいを見つけたいともがいている人、自分らしく楽しく生きたい!と思っている人は、ぜひカワラナで瓦割り屋の仕事の一部を体験し、川口さんの話を聞いてみてください。
今日はそのごく一部をご紹介します。
学生の頃つくった「やりたいことノート」に答えはあった
「このまま今の生き方を続けていっていいのだろうか。」
川口さんは30代のころ、こんな思いにとらわれたそうです。様々な体験から、生きるという事について深く考え、今後の人生について自問自答を繰り返していた時期があったといいます。
仕事で結果を出し、評価され、任される仕事も増えて忙しく働いていたものの、「社内のすごろくに乗っかって生きている」との違和感がぬぐえなかったそう。
川口さんは凄まじい読書家で、ご飯を食べるように本を読む。20代前半に読んだ『志村流(著者:志村けん)』で「人生は72年。36歳が折返し地点」という考え方に出会って人生の残り時間の使い方について真剣に考えたそうです。
たどり着いた答えが「楽しい人生を送りたい」「家族や仲間との時間を大事にしながら、みんなと一緒に楽しく暮らしていきたい」。
「やりたいことを片っ端から実行したら、きっと人生が楽しくなるに違いない」
そう考えた川口さんは、友人たちとやりたいことについて発信するSNSを立ち上げました。
書き込みをしている時、大学時代、就職活動で苦労したときに作った「やりたいことノート」のことを思い出しました。自分が本当にやりたいことは何だろうと、自問自答を繰り返し、湧いてくるやりたいことをひたすら書き綴ったノート中に、既に答えがあったのです。そこにはこう書いてありました。
「自分の会社を持つ。」
楽しく暮らすための方程式 必要なのはジャンプ力
平成28年8月8日、川口さんは合同会社ハハハを立ち上げました。「自分の人生はオリジナルのものなんだから、自分が楽しめる人生にした方がいい。ひとりじゃ世界を変えられないけど、自分と関わった人達が楽しくなってくれれば、みんなでバトンをつなげていけると思う。」
やることを決めず、まず会社だけ作って走り出した川口さん。何をするかは後から考えればいい。
自分が動けばと景色が変わる。楽しそうに動いていると、自然と仲間が集まってくる。仲間からもらうエネルギーで、もっと、どんどん楽しくなる。楽しさのうねりの真ん中にいるのが川口さんだ。
「けがをしないように保険をかけて暮らすのがスタンダードで賢い生き方とされている。だからジャンプしない人が多いんだと思います。」(川口さん談)
人生100年時代の見えない不安に心を砕いて備えるより、自分の頭で考えて、失敗を怖がらず行動する力、目の前のことに飛び込む『ジャンプ力』が大切だという話もされていました。
『泣こかい、跳ぼかい、泣こよかひっ跳べ!』 (泣こうか、飛ぼうか、迷っているんだったら、泣かずに跳びだせ!)
壁にぶつかって悩んだ時は、あれこれ考えずにとにかく行動しろ! 薩摩藩の藩中教育で歌われた鹿児島弁のわらべ歌の一節が頭に浮かぶ。瓦を割った瞬間、できない言い訳ばかりを考えていた、私(筆者)の頭がすこーんと割れた。
どんな瓦割り体験ができるのかも最後に少しだけご紹介しましょう。
瓦割りで使う「のし瓦」は、もともと真ん中から割って使うもの。あらかじめ筋目が入っているので、的を外さなければ、女性でもきれいに割れる。
「最後の瓦を割り切るために、腰を下げて拳を深く落としてください。」
怖がってインパクトの瞬間に躊躇したり、力をセーブしたりすると、最後の瓦まで割りきれない。振り上げた拳を、まっすぐ最後まで振り抜く瓦割りは、楽しいことに向かって全力でフルスイングしている川口さんの生き方に通じるものがある。と強く感じました。
高く積み上げられた硬い瓦に拳ひとつで挑んでみれば、瓦と一緒に自分が作り上げた既成概念や思い込みの壁も壊すことができるかも。
勇気を出して瓦を打ち砕いた暁には、今までに味わったことのない突き抜ける「爽快感」を感じる事ができるかもしれません。万が一割り切れなくても、自分の殻が割れていれば合格ということで。
記事:神宮司篤子(編集職人)
旅行情報:
リクルートを退職し、30代で始めた「人生を楽しむ」ための仕事とは?ー瓦割り屋になる旅ー
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