はじめまして、ビジネスライターの杉山直隆と申します。私が運営している「30歳からのインターンシップ」というサイトなどで、仕事旅行を取り上げさせていただいたのが縁で、「シゴトゴト」でも、不定期に記事を書かせていただくことになりました。以後、よろしくお願いいたします。
さて、今回のテーマは「学び直し」です。
「弁護士でも食えない」と言われる時代に本当の自分力を高めるには?
「単純な仕事がAIに奪われるので、人間には高度な仕事をしなければならない」「少子高齢化によって、年金が減るので、60代でも70代でも働き続ける必要がある」……。
こうした理由から、新たなスキルやノウハウの「学び直し」の必要性が、盛んに言われるようになりました。要するに、「一生食いっぱぐれないためには、稼ぐ力を高めていかないといけないよ」というわけですね。政府も、学び直しを支援しようと動き出しています。
しかし、学び直しの必要性はわかるけど、具体的に何を学べばいいのかわからない、と迷っている人は多いのではないでしょうか? また、仕事の合間を縫って学び直しに励んでいるけれども、なかなか成果に結びつかないという人も少なくないようです。
社会人の「学び直し」を目的別に整理すると、次の4つに大別できます。
1.「あなたにしか頼めない」と言われるような、独自の強みをつくり上げる
2.その仕事になくてはならないスキルや資格を取得する
3.ビジネスパーソンとして最低限必要な一般常識や教養を身につける
4.偉人が残した古典などに触れ、人間力を磨く
このうち、「稼ぐ力を高める」ためには、1の「『あなたにしか頼めない』と言われるような、独自の強みをつくり上げる」ことが必要です。
2の「その仕事になくてはならないスキルや資格」は、英語などの語学や、弁護士や税理士といった業務独占資格のことで、これも稼ぐ力を高めることにつながりますが、今や「弁護士でも食えない」とまで言われる時代。それ単体では独自の強みにはなりません。
独自の強みを作り上げるためには、戦略的に学び直しをする必要があります。そのポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
「掛け合わせ」を意識して集中。流行りにとらわれず自分が面白いと思えることを
1.一つで勝負するより、掛け合わせで勝負する
「『あなたにしか頼めない』と言われるような、独自の強みをつくり上げる」方法は、次の2つが考えられます。
A.何かの強みを、ライバルがいなくなるほど磨き上げる
B.二つ以上の強みを掛け合わせることで、希少な人材になる
どちらかというと、やりやすいのはBのほうです。
たとえば、「海外旅行のツアーコンダクター」や「介護ヘルパー」の人はたくさんいますが、同じ人が、「ツアコン」でもありながら「ヘルパーのノウハウ」も持っているとしたら、「介護が必要な人の海外旅行をサポートできるツアーコンダクター」になれます。すでにそういう職業はあるのですが、まだまだ少数。今後は高齢者が増えますから、ますます需要は高まるでしょう。
Aの場合は、ライバルがたくさんいる分野だと極めて困難なので、「ライバルはいないけれども、突き詰めれば、収入を得られる可能性がある」という分野を探し出せればチャンスはあります。
2.学ぶことは一つに絞って、集中的に取り組む
「学び直し」の方向性は、上のA・B、どちらでも良いと思いますが、他の人に負けない強みといえるようにするには、学ぶことを一つに絞って集中的に取り組む必要があります。二つを掛け合わせるにしても、どちらも中途半端では、「あなたに頼みたい」という人材にはなれません。先の話で言えば、「ツアコン」としても、「ヘルパー」としても、十分やっていけるだけの能力が必要です。
働きながら、二つのことを一気に勉強しようとすると、いくら時間があっても足りませんから、「これまでの仕事でやってきたこと」に新しい何かを掛け合わせるのが現実的でしょう。
3.「旬の学問」よりも「学んでいて面白いこと」を選ぶ
学ぶことを一つに絞り込む基準はさまざまですが、一つだけ強くおすすめしたいことがあります。それは、「いま旬とされている学問」や「これを学ぶと将来安泰といわれること」よりも、「学んでいて面白いと感じること」「のめりこめること」を選ぶことです。
なぜこんなことをいうかというと、いくら旬なことや将来安泰だといわれることでも、興味がなければ、学び続けられないからです。その分野を学ぶのが楽しくて仕方がない人には絶対に勝てません。
逆に言えば、将来に役立つのかよくわからないし、今の仕事と掛け合わせられるのかもわからないことだとしても、ものすごく興味のあることがあれば、趣味でいいのでそれを学ぶべきです。誰よりも詳しくなれば、お金を稼ぐことにもつながります。
たとえば、趣味の夜景鑑賞が高じて夜景コンサルタントとして町おこしなどで活躍している丸々もとおさんや、国内の4年制大学をすべて訪問することで大学評論家となり、全国の高校から講演で呼ばれるようになった山内太地さんは、その代表。
また、アイスマン福留さんは、毎日、コンビニで売っているアイスを食べてブログで紹介していたら、コンビニアイス評論家と呼ばれるようになり、今や、テレビなどのメディア出演や、商品開発のアドバイザーとして引っ張りだこ。今では本業となり、アイス関連のイベントなどを開催しているそうです。
そう考えると、「学び直し」にはさまざまな選択肢があることが分かるでしょう。
4.机の前で考えてもわからない。手当たり次第に試してみる
「学んでいて楽しいこと」を一つに絞るのは難しいことです。ネットの情報を見て比較検討するだけでは、判断がつかないと思います。
まずは興味があることや良さそうだと思ったことを、手あたり次第、試してみましょう。
参加費が安いセミナーに参加する、授業見学を申し込む、参考書を買って読んでみる、などなど、お金のかからない小さなアクションでOK。また、「仕事旅行」のように、1日だけ仕事体験ができる仕組みを利用して、学んだことが生かせる仕事の現場をのぞいてみるのもアリでしょう。
そうして、少しだけでも試してみると、「面白いと思えるか」「続けられそうか」などは、すぐにわかるはずです。面白そうなものが見つかったら、期間を区切って、何回か試してみれば、自分に合うかどうかがわかってきます。
5.学んだ知識は一日も早くアウトプットする
「学んでいて面白いと感じるもの」が見つかったら、それを学んでいけば良いわけですが、気をつけたいのは、学ぶこと自体が目的化することです。知識が増えていくことに満足してしまうわけですね。
しかし、学んだ知識を使わなければ、生きた知恵にはなりません。とくに、「資格」に関しては、取得しただけでは周囲から評価されません。それを使って、何らかのアウトプットを出して、初めて認められます。
学んでいることに満足しないで、一日も早くアウトプットしましょう。
学んだ知識をブログにわかりやすく書いたり、勉強会を開いて講師をするのも手ですが、ベストは実戦で試すこと。マーケティングについて学んだのなら、小さなネットショップを立ち上げたり、レンタルショーケースを使って物を売ったりすれば良いですし、中小企業診断士の資格を取得したのなら、知り合いの中小企業に頼んで、無料でコンサルティングをするのもアリでしょう。
すると、実戦的なノウハウが蓄積できますし、自分の至らない点に気づいて、さらに足りないことを学ぶようになります。その積み重ねによって、だんだんと自分の強みが磨かれていくというわけです。
学び始めたら、「実戦でのアウトプット」を強く意識すること。そうすれば、「学び直し」が仕事の成果につながるようになるはずです。
執筆者プロフィール
杉山直隆(すぎやま・なおたか)
ビジネスライター、オフィス解体新書・代表。1975年生まれ。専修大学法学部卒業後、編集プロダクションを経て、2016年に独立。『週刊東洋経済』『月刊THE21』『東洋経済オンライン』などのビジネス媒体で執筆する一方で、社会人向けインターンシップ情報を紹介する『
30歳からのインターンシップ』を立ち上げ、取材活動をしている。
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