ここ数年で急によく耳にするようになった言葉、『パラレルキャリア』。
「気にはなっているけど、実際どうなの?」と思っている人や、もしかしたら「もう既に始めている」という人もいるかもしれませんね。改めてその意味を調べてみると、以下のように出てきます。
パラレルキャリア(英語:parallel career)とは、ピーター・ドラッカーが著書『明日を支配するもの』等にて提唱しているこれからの社会での生き方のひとつ。現在の仕事以外の仕事を持つことや、非営利活動に参加することを指す。(Wikipediaより)
ちなみに副業との違いは「お金を得ること」だけではなく、「今の仕事以外のスキルや人間関係を広げたり、社会貢献をすること」が主な目的である点です。
そんなパラレルキャリアを実践している“パラレルワーカー”たちは、一体どんな生活を送っているのでしょうか?
その謎に包まれた生態を追うのが「パラキャリ☆生態図鑑」。実際の「仕事内容」から最も気になる「収入」面や「時間」の使い方、そしてなぜその道を選んだのか?という「進化」の歴史までを、徹底解剖します。
記念すべき第1回のサンプルは、日系大手企業のサラリーマンでいながらして、休日は地域で活躍する中小企業診断士。さらには合コンマスター!?という3つの顔を持つ男、『つっちー』さんです。
大企業だって安心できない時代。パラレルキャリアで自分の戦闘力を磨く
◆サンプル No.1~プロフィール ◆
なまえ:つっちー(38さい・♂)
かぞく:妻1人&子1人
しゅべつ:企画・管理けい/経営企画ぞく
とくいわざ:資格取得・コスプレ
仕事旅行編集部・寺崎(以下/寺):つっちーさん、こんにちは!この度は「パラキャリ☆生態図鑑」の記念すべきサンプル第1号として出演ありがとうございます!
つっちー(以下同じ):いえいえ、僕なんかでいいんですかね、たいしてパラレルキャリアできているのかわかりませんが・・・。
寺:いや、つっちーさんのように企業にお勤めのサラリーマンでいながら、そこで得た仕事の経験を社外で活かせるんだ! という例は皆とても気になる話題ですよ。
最近じゃ日本の歴史ある大企業ですら、明日が見えない時代じゃないですか? 早期退職の募集もかなりよく耳にしますし。。。
だから今回は是非その生態を、図鑑として「①仕事内容」「②時間」「③収入」「④進化」といった4つの切り口から丸裸にさせていただきたく・・・!
つっちー:できる限りがんばります!(笑)
寺:ではまず、つっちーさんは現在どんなパラレルワークをしているのか? 「①かつどう」のページから見て行きましょう。3つの仕事に共通するモチベーションの源についてもお答えいただいてます。
仕事で培った経験を、地域で活かす。そして本業にもシナジー(相乗効果)を
寺:現在のお仕事は・・・普段は日系大手電機メーカーの経営企画室勤務、そして時々個人で中小企業診断士として地域の商店街支援や補助金取得支援で活躍、最後に合コンマスター、の3つの顔があるんですね。
そんなつっちーさんのモチベーションの源にあるのは、「地域に"シゴト(雇用・事業)"を創ることで元気にしたい!」という気持ちなのだと書かれていますが。
つっちー:そうですね。僕は長野県の小諸市という地域の出身なんですが、小諸が北陸新幹線のルート駅から外れて以降、駅前の商店街がどんどん衰退して寂しくなって行く姿を見て育ちました。
そこから大学のために上京してずっと東京に住んでいたのですが、東日本大震災の復興支援のボランティアに参加したんです。その時、あらゆるものを流された被災地を見て、何故か自分の生まれ故郷の衰退していった町が頭に浮かびました。
自然災害でなくても、経済が衰退することで同じように賑やかだった街がなくなってしまうこともある。自然災害を防止することは僕にはできないけれど、せめて経済の活性化の分野で何か貢献しなくては、と思ったんです。
社会人になってから自ずと地域活性化を視野に入れたキャリアを築くことは考えてきましたが、改めて強く決意を新たにしたのはその時でした。
寺:新卒で入られた今の会社では、ずっと事業企画や経営企画の部署で働かれているそうですが、これはそもそも希望していたお仕事だったのですか?
つっちー:いえ、特に自分の希望ではなかったですが、仕事内容に特に不満はありませんでした。だから、自分が地域にどう貢献できるかな? と思った時も、基本的には「自分が今、できること」を中心に考えていきましたね。
そこでたどり着いた結論が、地域を一番活性化できるのは「地域にシゴト(雇用)を作る」ことです。
そしてそのために自分ができるのは、事業や経営企画の知識を磨いて「地域の企業さんを経営面からサポートする」だと思いました。
寺:なるほど、それで中小企業診断士の資格取得に至ったのですね。副業も、まったく別のことをやって本業に影響が出てしまうのは問題ですが、せっかくパラレルワークするならば、手掛けているそれぞれの仕事にシナジー(相乗効果)が出ると良さそうですね。
つっちー:はい、実は地域で個人で活動している際に、そこから本業の仕事の話に繋がることもあるんです。逆に普通の会社員をしているだけでは生まれないご縁だったりもするので、小さいながらもシナジーは出ているなと思います。
寺:そうなるとすごく良い循環が生まれますね。そして・・・この合コンマスター!?、というのは何でしょうか?(笑)
つっちー:あ、いえ、これは、自分が合コンに行くんじゃないですよ!(笑)
日本合コン協会の合コンマスターの資格を持って活動しているんです。
例えば飲食店さんと一緒に婚活支援のイベントを企画したり、地域に「出会い」を作ることで盛り上げたいなという真剣な思いでやっています。
寺:え、そんな協会があるんですか!? つまり履歴書の資格欄に「中小企業診断士」と「合コンマスター」って並べて書ける、ということですよね!?
そういえば「とくいわざ」のところに資格取得とありますね。資格マニアなんですか?
つっちー:そうですね・・・合コンマスターの他は、船舶免許、温泉ソムリエ、世界遺産検定・・・等を持っています。基本、仕事に役に立つものしかとらないようにしてます。
寺:仕事に役に立つ!? ・・・えーっと、「温泉や遺産も立派な観光資源で地域活性化につながる」とかそういうことですね(笑)
とにかく、合コンマスターも未婚や少子化問題だったり、飲食業界の活性化といった地域のためにやっている活動ということで理解しました。
次にお聞きしたいのが、「時間」についてです。きっと誰もが「フルタイムで仕事しながら、どうやって他の事をやる時間を取ってるんだろう??」という点が気になると思うので・・・。そこのところを詳しくお聞かせください!
基本はリモートで。イクメンパパのパラレルワークは、通勤時間をうまく活用
つっちー:個人事業主としての仕事については平日の通勤時間を活用していますね。今住んでいる家から会社まで、通勤が電車で1時間ちょっとかかるので。
基本、お客様の現在の状態を見て「じゃあ次はここの指標をここまで上げるために、こんなことしましょう」といったアドバイスを行う業務がほとんどなので、メールベースで仕事を進められるんです。
寺:そうすると、個人の仕事の客先とは打ち合わせとかはあまりしないのですか? それとも土日がメインでやってる感じですか?
つっちー:基本的には打ち合わせも初回は必ずやりますが、それ以降はリモート(遠隔)が多いですね。土日もできる限り家族の時間に充てたいので、何かイベントごとがある時のみ出動しています。
寺:なんだかイクメンパパっぽいですね。平日は夜6時退社で子供と一緒に夜9時から朝3時で就寝・・・え、でも本当に6時退社できるんですか?
つっちー:実際は、夜に打ち合わせが入ると夜9時退社→深夜1時就寝→朝6時起床、みたいなパターンもありますね。
でも、基本子供と共に寝起きすることが多いです。めっちゃ朝型になったので、朝3時から家事と個人の仕事をやることもあります。
寺:自分の得意分野だからこそ、限られた時間の中でもポイントを押さえた仕事ができるのでしょうね。
それでは、次は一番気になる「収入」部分を見て行きましょう。さすがに金額をそのままお聞きする訳には行かないので、メインであるサラリーマン(会社員)としての収入と、その他(個人事業主)の収入とのバランスを教えてください!
いつか来る独立期に備え、今はとにかく経験を積む時期
寺:おお…なんとなく予想はしていましたが、たぶん本業であるサラリーマンのお給料が充実しているので、こんな割合になってるのだと思うのですが、会社は副業はOKなのですか?
つっちー:「兼業制限」と言われており、やってはダメということはありません。が、そんなにおおっぴらにはOKとは言いにくいです。最近は早期退職も募ることもあるので、副業を完全NGにもできないのではないでしょうか・・・。
寺:今はまだサラリーマンの収入の方がまだまだ多いですが、今後は個人事業主の割合を増やして行かれる予定ですか? この先はどのようなキャリアプランを考えているのでしょうか?
つっちー:変化の激しいこれからの時代は、やっぱり会社員としてだけじゃなくて、個人としてもお金を生み出せるスキルを磨いていかないといけないと強く感じています。
今は個人で受ける中小企業診断士としてはまだまだ駆け出しですが、ゆくゆくはそちらで独立できるくらいのスキルを身に付けて行きたいですね。
奥さんが全国転勤もある仕事なので、逆に僕が今と同様の給料まではいかずとも、家族を養える最低限の稼ぎを個人事業主として作れるようになればいいなと思います。
寺:本当に、明日がわからない時代ですよね。でも一体どのようにそういった危機感を持つに至ったのか、もう少しお聞きしたいです。
それでは最後に入社してからこれまでのつっちーさんの「進化」の歴史をお伺いします。
自分から磨かなければキャリアに進化なし
つっちー:入社してから最初の転機は、2007年に子会社に出向した時でした。そこの会社には2年ほどいたのですが、「自分のキャリアを磨いていく」意識の強い社員の方々が多く、とても刺激を受けました。
そこから、これまでぼんやりと考えていた「自分が地域にどうやって貢献できるか?」を真剣に考え始めて、本社に戻ってから中小企業診断士の資格を取ることにしました。
寺:いやー、でもかなり難しい資格ですよね・・・?普通は専門学校に通って取る人も多いのに、働きながら勉強するのって大変じゃなかったですか?
つっちー:ええ、足掛け4年かかりました・・・。勉強は大変でしたが、その先にやりたいこともあったし自分の仕事にもプラスになる内容だったので、ためになりました。
そして、2013年に資格を取得してから、中小企業診断士協会のご紹介でいくつか実際に地域案件をお手伝いすることになったんです。
最初は台東区の商店街のイベント企画運営と東北の事業者の復興支援、そして地元長野県の起業家支援3つの案件をお手伝いしました。
寺:中小企業診断士協会がそういった案件紹介もしてくれるんですね。お金は有償でやってたんですか?
つっちー:初めてだったので、無償なところもあったしお金を頂いてやった案件もありました。あまり有償無償かはこだわっていないかもしれませんね。
でもやっぱり色々とこれまでやってきて思うのは、無償でも有償でもいずれにせよ大切なのは「この経験から何が得られるか」を自分でちゃんと意識することだと思います。
寺:そうですね、ボランティアでやってると最初は良くても長く続けると急にフッとモチベーション落ちる時がやって来るものですよね。動機付けは大切です。
つっちー:はい。その案件がお蔭様でとてもご好評いただき、そこから北海道や静岡といった全国様々なところで活動を広げていたのですが、2014年に子供が生まれてからは家庭が落ち着くまでしばらく家のことに専念して、仕事は少しセーブしていました。
寺:とてもご家庭を大切にされている一面が伺えますね! それで、落ち着いた2016年頃にまた活動を再開されたと?
つっちー:ええ、でもこれまでみたいに全国回っている時間がなくなったので、基本的には今住んでいる地域を中心に活動しています。
寺:パラレルキャリアの4番目の顔は”イクメンパパ”で決まりのようですね。ご協力ありがとうございました!
イラスト:中島雪絵
インタビュアー・プロフィール
寺崎 倫代(てらさき・みちよ)
早稲田大学商学部卒。幼い頃より「国が違えば価値観も常識も異なる」ことから視野を広げてくれる海外に憧れ、大学在学中に米国ワシントン大学のインターンシッププログラムで留学。卒業後は、フランス系の商社やインターネット広告代理店などを経てBBC(英国放送協会)の国際放送における広告部門にて6年間勤務。現在、「
大人のギャップイヤー」と称して
編集やライターといった様々な新しい分野に挑戦中。2017年4月より、かねてより憧れだった
デンマークの成人向け教育機関・フォルケホイスコーレへ3か月間留学。