昨年末、仕事旅行社主催のイベントが都内某所で行われました。イベント名は『LIFESHIFT×旅~人生を変える旅に出よう~海外編』。(
大好評につき第2回も開催決定!!詳細はコチラ)
「LIFESHIFT」と言えば2016年の発売以来、なんと26万部の売上を記録。ビジネス書としては異例のベストセラーとして、話題になりました。また、2017年の流行語にも選ばれた「人生100年時代」という言葉は、この本がきっかけでした。
本書では「平均寿命は今よりもっと延びて、100歳を超える。そして、人は人生で今よりもっとたくさんの変化を経験することになるだろう」と予測しています。また、「"旅”は人生が変化するきっかけとして、重要な役割を果たす」とも述べています。
大人の職業体験という"旅”を提供している仕事旅行社。「"旅”が人生やキャリアに、どう影響を与えるのか?」という問いは大変気になるポイントです。
そんな背景から今回は、LIFESHIFTの出版社である東洋経済新報社のご担当者と共に、世界一周経験者に「旅で”LIFE”がどう”SHIFT”したのか?」を根掘り葉掘りインタビューするイベントが催されました。
会場は旅行会社H.I.S.が表参道に展開するカフェ&イベントスペース・
H.I.S.旅と本と珈琲と Omotesando。ブックディレクター幅允孝さんが厳選した旅にまつわる1500冊の本が楽しめる、旅好きにはたまらない場所です。
人生100年時代に役立つのは、どんな"旅”なのか!? LIIFESHIFT的な観点を交えつつ、気になるそのヒントをレポートします!
横並びの「一斉行進」から、「百人百様」の時代へ
会場は熱気に包まれ、イベント終了後も参加者同士の交流が数多く見られました。
イベント前半は、東洋経済新報社の笠間さんによる「LIFESHIFT」の解説から始まりました。
東洋経済新報社 出版局 書籍プロモーション部長 笠間勝久さん
「これまで終身雇用制が当たり前だった日本では、“教育(学生)→仕事(社会人)→引退(定年退職)”というシンプルな「3ステージ」を歩む人生が一般的でした。しかし人生100年時代には、こういった『一斉行進』な生き方はもはや通用しなくなります。
代わりにやって来るのは「3ステージ」だけにとらわれない「マルチステージ」式の人生。例えばキャリアも「生涯でひとつのキャリア」に留まりません。学び直しを経てキャリアチェンジしたり、副業・複業など「マルチなキャリア」を積極的に作っていきます。」
その結果、「●●歳だから××」という固定観念はだんだん薄れて行き、『百人百様』の生き方に。これまでより人生の選択肢は増え、様々なステージを行ったり来たりする時代になるそうです。
ちなみに、LIFESHIFT著者であるリンダ・グラットンさんも、コンサル会社の華々しいキャリアから年収10分の1の学者へと転身。プライベートでは60代にして再婚、現在は合計8児の母というまさにLIFESHIFTを地で行く体現者とのこと。
尚、本書では次世代の「マルチステージ」のモデルとして、以下のような新しいライフステージが提唱されています。
①エクスプローラー(様々な事柄を試し、自分の可能性を模索する時期)
②インディペンデント・プロデューサー(組織に属す会社員としてではなく、自分で仕事を創る時期)
③ポートフォリオ・ワーカー(同時にいくつもの活動に関わる時期)
笠間さんによれば、ここでの大切なポイントは「手当たり次第に“マルチにさえなれば良い”という訳ではない」ということ。
色々な可能性を試しつつも、「自分にとって何が最適なのか?」を常に問い、百人百様の自分に合った選択をして行くことが大前提になります。そこで大切なのは、自分の可能性をしっかりと模索する『①エクスプローラー』のステージ。
そして、このステージで人々が最もよく行う行動のひとつが、まさに“旅”なのだ、という締め括りで前半は終了しました。
“人生100年時代の旅”で大切なのは、「予定不調和なカオス」をどれだけ楽しめるか
左から渡邉賢太郎さん、藤本正樹さん、笠間勝久さん。藤本さんはインドの民族衣装姿で登場!
後半では、世界一周旅行を経験した2人のゲストが登場。まずはそれぞれの旅行記を振り返るところからスタートします。その後「世界一周旅行から何を感じて、今の仕事に就いたのか?」をお話し頂きました。
ゲスト1人目は「お金」をテーマに世界一周旅行をした
渡邉賢太郎さん。新卒で大手外資系証券会社に入社した渡邉さんは、リーマンショックをきっかけにお金の価値について疑問を感じ始めます。その後、お金の聖地を巡る世界一周旅行を決意。
約2年間の旅を通じて渡邉さんは「今までは見ず知らずのヒトとの交換の媒介物として主に『お金(貨幣)』が使われて来たが、これからは『信頼』をダイレクトに見える化して投資や交換をする時代になっていく*」と確信。(*いわゆる評価経済社会のこと。詳しくは渡邉さんの
著書参照)帰国後、その思いを周りに話し続けたところ、現職である(
SUSANOO)の仕事が舞い込みます。
この仕事は、金銭的な利益だけでなく社会にもっと「信頼」と「つながり」を創り出すことに重点を置いた“社会起業家”を育成するプロジェクトとのことで、まさに渡邉さんがこれから創りたい社会につながる仕事だったそうです。
そして2人目は「教育」をテーマに世界一周旅行をした、元中学校教諭の
藤本正樹さん。
藤本さんが世界一周で感じたのは、「世界は愛と笑顔を望んでいる」ということでした。どれだけ紛争や社会問題が起きようとも、人々が最後に望むものは「愛と笑顔にあふれた平和な生活」であることは、世界共通だったそうです。
でも、メディアではこういった類の事実はなかなか伝えられることはあまりありません。そこで藤本さんは「だからこそ、自分は世界で起こっているリアルな事実を子供たちに伝えたい!」という強い思いから「ふじもん先生の旅プロジェクト」を立上げます。
現在では出張授業や講演、研修などを通じ、旅を続けながら世界を伝え続ける「旅人先生」として精力的に活動を続けているそうです。(現在は「
株式会社グローカルアース」に改名)
二人の話を受け、東洋経済の笠間さんは「LIFESHIFT的な観点から見て、二人キャリアの選び方には共通点がある」とコメント。というのも、二人ともエクスプローラー期(世界一周旅行)の中で何かしらの興味を持った分野を突き詰めて行き、その結果今の仕事に辿り着いていることが共通しています。
LIFESHIFT的に見るとこれは、“余暇(遊び)の時間から学びが生まれ、そして仕事につながる”という「Work=Play」の状態なのだとか。こうやって、仕事とプライベートに相乗効果が生まれて行くことは人生100年時代を充実して過ごして行くためのキーポイントなのだそうです。
ここで、会場からは「旅で突き詰めたいテーマが出てこない場合は、どうしたら良いですか?」という質問が投げかけられます。
これに対し、渡邉さんと藤本さんは「あえて何も決めない旅をして、予定不調和なカオスを思いっきり楽しんでみることがおススメです」と回答。「”想定外”の体験でしか見えてこない、自分の無意識的な欲望や価値観もある」「何が起こるかが見えている予定調和な旅は、”消費”に近いと思う」と二人は語りました。
またその具体的な例として、強盗に銃口を突きつけられたり、誘拐犯に拉致されそうになった時に2人は何を感じたか? といったスリリングなエピソードが披露され、会場は大いに盛り上がりました。
最後に主催協力者より
「”はたらく”と”くらす”の羅針盤を探す大人のデンマーク旅~Kompas」が紹介されました。仕事旅行もエクスプローラー期を体験できるサービスではありますが、「ずっと働き続けて来たけど、一度ゆっくりキャリアを見直してみたい。もっと広い世界を見てみたい!」という人にはこちらもおすすめ。
今回のイベントには、20~40代と幅広い世代の男女が参加されました。また、事後のアンケートには、「生き物として本来持っている”勘”のようなものが、日常生活の中で失われつつあると感じる」といったコメントも多く見られました。
「どんな洗練された大人の中にも、外に出たくてしょうがない小さな子供がいる」とは、ウォルト・ディズニーの言葉。予定不調和なカオスを楽しむことで、忘れていた自分を取り戻す。人生を変化させる旅は、そんなまだ見ぬ自分に出会うことから、始まるのかもしれません。
記事:寺崎倫代(シゴトゴト編集部)
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