仕事旅行社の記事コーナー「シゴトゴト」では、今年も約120本の記事を公開することができました(2017年)。いまの時代の「働き方」や「仕事」を考える上で参考になる"読み物集"になっているのでは?
今回はその120本の中から、皆様に特に読んでいただきたい選りすぐりの記事をピックアップしてご紹介。それにて今年の記事納めにしたいと思います。
今年一番読んでほしいインタビュー記事
去年に続き「働き方」関連のニュースが多い一年だった。「働き方改革」などとも言われるが、それ自体は悪くない話にせよ、どこかピンとこない。働く時間を減らして「その結果どんないいことがあるの?」がよくわからないからだ。
激務が軽減されるのは大歓迎だが、仕事のやりがいや生産性、ヘタすると給料まで減ってしまってはたまらない。人手不足の問題もある。仕事の時間が減って時間を持て余す人もいるそうだ。
そのあたりモヤモヤしている人には、インタビューシリーズ「仕事は人々を幸福にするか?」をおススメしたい。なかでも、慶応大学の前野隆司さんのお話には、このテーマを考える上での様々なヒントがあった。
★働き方改革からすっぽり抜け落ちているものとは? 慶應大学前野隆司教授に聞いたー仕事は人びとを幸福にするかvol.3-
一方で「幸福」というのは難しいテーマである。幸福の捉え方は人によって結構違う。それは心の状態だから絶対の正解がない。答えのない方程式のようなものであり、リクツだけでは手に入らない。
だが、その働き方を実践している、あるいは「どうやればそこに近づけるか?」を試行錯誤している人も多い。
「シゴトゴト」では、そういった試みを行う会社や人を積極的にフィーチャーしたいと考えているが、私がこのコーナーを編集していて、今年一番心を動かされたのは以下の記事だ。
★アート集団「studio COOCA」の関根幹司さんに聞くー僕もまだわかってません。この施設が何をすべきか。障害者とは何者なのか?
「絵を描く」という行為はどこから始まるのか?
一人のアーティストの働き方をめぐって施設の人たちが議論して、「この人にとっては、チューブを絞るところから創作なのでは?」との結論にいたる。この場合の「絵を描く」は「仕事をする」に言い換えることもできるかもしれない。
聞き手はよくぞこのエピソードを引き出せたなあと。ぜひご一読いただきたい。以下の会社による取り組みも興味深い。
★同じ釜の仕事ゴハン。スプーン「水曜食堂」のまかない飯はジーンとくる"ものづくり"の味がした
★Goodbyeブラック! ウルトラスーパーニューな働き方へ~世界中から若者が集まる“ハイブリッド”な広告会社の挑戦
見たことない、世界と未来を見に行こう
仕事や働き方を考えるときに「未来はどうなる?」の視点を持つことはやっぱり重要。
もちろん、先のことなどだれも確信を持って予測することなどできないが、着々と備えができると自分の立ち位置もハッキリするかもしれないーーと思う人には、未来予報株式会社による連載「10年後、あたらしくできる仕事を見に行く」をオススメしたい。
Twitterやairbnb、Instagramなどのサービスが世界に知られるきっかけとなったビジネスカンファレンス「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」。
その現地取材を続ける未来予報のお二人によるリレーコラムは、会場の臨場感まで伝わってくるようで読み応えがある。仕事旅行のキャッチフレーズは「見たことない仕事、見に行こう」だが、記事からはまだ見ぬ未来のワクワクを感じ取っていただきたい。
★未来のモノサシをデザインするスキルー未来予報コラム|10年後、あたらしくできる仕事を見に行くvol.3
世界を知ることは、未来を知ることにもつながっている。海外の仕事や働き方にはギャップを感じることが多いが、いつの間にか日本でもそれが当たり前になっているケースも多いもの。
一昨年くらいから行政が「女性活躍」をやたら言い始めたのも、それが2010年代の世界の"常識"になっていることと無縁ではないだろう。世界の流行は少し時間を置いて日本にやってくることが多い。1970年代のウーマンリブもそうだった。
そんなわけで、「シゴトゴト」では海外情報も積極的に紹介するようにしている。あくまで知識としてだが、広い世界には「こんな仕事や働き方もあるんだ」とわかるだけでも面白い。
例えば、建築家の山嵜一也氏によるコラム連載「イギリス人の割り切った働き方」は、日本とイギリスで働き方は「こんなに違うんだ!」ということを教えてくれる。以下の回などを読むと、ロンドンのビジネスパーソンが、日々どれだけの緊張状態の中で働いているかがヒシヒシと伝わってくる。
★突然の解雇通告への気持ち対策は“失意泰然、得意冷然”ー建築家・山嵜一也のコラム連載「イギリス人の割り切った働き方」vol.5ー
「イギリスの働き方」と聞くと、私のような住んだことない人は「勤務時間も短くて楽そう!」なんてつい思ってしまうものだが、その働き方の仕組みの根っこにはワケあっての"割り切り"もあるのかもしれない。
ハリウッドで俳優として活躍する、松崎悠希氏の英語習得術にはビックリすること間違いなし。カメレオン女優を目指す鈴木つく詩さんは、この連載企画で"インタビュアー修行"の真っ最中。
★英語辞書を丸暗記!? 俳優の松崎悠希さんがハリウッドで体得した「100時間の法則」ーカメレオン女優鈴木つく詩がゆくvol.2ー
アフリカの少数民族を"私のヒーロー"として撮り続けるヨシダナギ氏へのインタビューもエキサイティングだ。
★写真家・ヨシダナギ「仕事」を語る(前編)ーアフリカに行くまで、日々こんなに一生懸命生きたことなかったー
AIの時代に見直したい「カラダ仕事」
こういった年末振り返り記事の"お約束"として、最後に来年を占うようなことも書いておこう。近頃私は「カラダ仕事」への注目が高まっていくのではないか? と考えている。
「カラダ仕事」とは文字通り、一連の作業の中でカラダの技が重視される職種である。イメージとしては「職人仕事」に近いが、世に言う"肉体労働"や"手仕事"ともちょっとニュアンスが異なり、それらも含めて頭と身体のバランスがいい仕事たちと思っていただければ。
言い換えるなら「職人仕事の進化系」といったものかもしれない。
なぜそう思うのか? AIに勝てるのは人間のカラダだからだ。
「働き方改革」と同時に「人工知能の仕事が人間を超えるか?」といったテーマも、昨年以上にクローズアップされる1年だった。まだ実験段階のプログラムも多いとはいえ、AIは想像以上にいろんなことができることが一般的に語られ始めた。
そんな時代を見越して、「大手銀行などがAI導入により今後大幅な人員削減をする」といった報道も世間を騒がせたが、いまでは仕事旅行のような小さな会社でも、営業活動のサポートで他社の"AIもどきサービス"を当たり前のように活用し始めている。
聞くとまだ頭はそんなに良くないらしいが、データを食えば食うほど賢くなっていきそうだという。そうなるとスゴ恐ろしい話だ。
だが、こいつ(AI)はどうやら手作業系が苦手らしい。未だしょっちゅう見かける「AI時代になくならない仕事」みたいな記事の中で、なぜかバーテンダーが頻繁に入っているのも、頭とカラダのバランスがものを言う職種の代表例としてだろう。
こういった仕事が私の考える「カラダ仕事」である。単純で大まかな作業ならロボットが得意だが、いわゆる職人芸仕事はAIにもロボットにも難しそうだ。部分的に取り入れても、それをコントロールする人間が必要。
そして私もこの半年くらい脳と身体を不自然に分けない「カラダ仕事」への興味がどんどん湧いてきて、房総で漁師体験をするに至った。
★キャリア18年の編集者が房総のベテラン漁師に弟子入りすっぺ!【前編】ー人間の"狩人"としてのDNAを呼び覚ます仕事ー
このほかで言うと以下の記事なども「カラダ仕事」の記事として読み応えがある。創業350年の金魚卸売業「金魚坂」の女将さんは、なぜ、金魚を網ではなく手ですくっていたのか?
味わいのある女将の語り口を楽しみながらお読みくだされば。
★創業350年・金魚の卸問屋『金魚坂』の女将さん【前編】金魚は気じゃなく手と目を遣う。そんで一緒に遊ぶと丈夫に育つの
ノスタルジーやレトロ趣味としての"手仕事"ではなく、現代的な"職人仕事"とはどんなものだろう? そのヒントを知りたい方は、伝統技術ディレクター・立川裕大氏へのインタビューが参考になるだろう。
★伝統技術ディレクター・立川裕大「仕事」を語る(前篇)ー人が大勢いる場所で仕事をしても勝ち目は出てこないー
仕事旅行社でもこの秋から自社サービスを用いてスタッフを募集しているが、職種名を「編集職人」としたのは、先に述べたような思いから。横文字だらけの空疎な感じではなく、ネーミングに"手に職感"があるといいなと。実際、そういう仕事でもあるし。
ありがたいことに50名以上の方からお問い合わせいただき、すでに10名近くの方が記事を寄稿してくれました。編集職人の皆さんの記事にも是非お目通しを。募集も引き続き行っています。
★SOS! 仕事旅行社のコンテンツをつくる"編集職人"募集。ノルマ・出社・空気読みの必要ナシ。もちろん給与はアリ!【業務委託】
この一年、当コーナーに執筆・取材協力くださった方々に感謝するとともに、この場を借りてお礼申し上げます。来年も仕事旅行同様、当コーナーのほうもよろしくお願いします!
河尻亨一(シゴトゴト編集長)
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