2017年12月26日更新

不確実で曖昧な「VUCAの時代」には"他人と違うこと"が武器になる【イベントレポ】

先日、TECH PLAY SHIBUYAにて行われた『世界を変えていくのは、よそ者、バカ者、若者-これからの新しい働き方革命「不確実時代に生き抜くための必須スキルとは」』(Story Design house/X-TANK主催)というイベントに参加してきました。

イベントの前半は、赤字続きだったハイアール・アジア(現・アクア)の黒字化を1年で成し遂げた伊藤嘉明(いとう・よしあき)氏のキーノートスピーク。

後半は、伊藤嘉明氏、総合格闘家・青木真也(あおき・しんや)氏、BUSINESS INSIDER JAPAN統括編集長・浜田敬子(はまだ・けいこ)氏の3者によるトークセッションが行われました。

「AI(人工知能)によって仕事が無くなる時代が来る」と耳にすることも多くなった現代。自分の仕事は人工知能に奪われてしまわないだろうか? 数年先も予想のつかない時代のなかでどう働いていけばいいのだろうか? と漠然とした不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

イベント前半部分の伊藤氏のキーノートには、これからの”不確実時代”はどうなって行き、どういう人が生き残るのかのヒントがあるように感じました。

そこで今回は伊藤氏のキーノートをレポートすると共に、仕事や生き方のヒントを探っていきたいと思います。

伊藤嘉明氏 キーノートスピークの様子

予想外のことが数年単位で起こる「VUCA(ブーカ)の時代」


「先進国15カ国だけ見ると、AIによって710万人が仕事を失うことになる」。

冒頭から衝撃の内容で伊藤氏のトークは始まりました。具体的に無くなる職種としては、今まで”この資格さえあれば食べて行けないことはない”と言われていた「○○士」という職業。

例えば、会計士や行政書士などの専門職から無くなっていくそうです。またコールセンターの仕事は、すでに60%程度がAIに置き換えられているのだそう。

「予測不能の時代」を象徴する例として、伊藤氏はアメリカ合衆国のドナルド・トランプ大統領の誕生を挙げていました。トランプ氏は、”政治経験なし、3度の破産、税金は払っていない”など、異色の経歴の持ち主。そんな経歴のトランプ氏が大統領になると誰が予想していただろうかというお話もありました。

こういった予測不能の時代を指す言葉を「VUCA(ブーカ)の時代」と呼ぶそう。VUCAとは下記の文字の頭文字を取ったもの。

Volatility(変動)
Uncertainty(不確実)
Complexity(複雑)
Ambiguity(曖昧

「予想外のことが数年単位で起こる」のがVUCA時代の特徴です。そして、「VUCAの時代に適応できない”企業”は滅びる」とのお話も。

そんな”VUCAの時代を生き抜くため”の方法として、伊藤氏から語られたポイントは3つ。

『自分の直感を信じる』『業界の常識を無視する』『勝てる戦いに持って行く』

伊藤氏がその3つのポイントに気づくきっかけとなった仕事が、マイケル・ジャクソンのドキュメンタリー映画「THIS IS IT」の販促です。(※「THIS IS IT」販売当時、伊藤氏はソニー・ピクチャーズ エンタテイメントに所属)

当初、”業界の常識”に基づいて算出された売上予想枚数は30万枚。頑張っても35万枚と予想されていたそう。しかし、伊藤氏は「世界一のスーパースター・マイケルジャクソンの最後のツアーのリハーサル映像だ。このDVDとブルーレイは最低でも100万枚は売れる」という”自分の直感”と”逆算”のもと、会議で売上予想枚数とは桁違いの100万枚を提案。

ベテランの幹部からは、「君は素人? 無理に決まってますよ」との声も出たそうですが、伊藤氏は直感を信じ、さらに多い200万枚を提案。会議では次々と偉い方が席を立ってしまったとか。

その後、”勝てる戦いに持って行く”ための方法を考えたのはチームメンバー。例えば、それまで常識のなかでは考えられなかった「生鮮食品売り場で売る」「スポーツ用品店」で売るという販売方法を実施。そうすることで、普段レンタルチェーンやCDショップを利用しない人たちにも販売の情報が届くようになりました。

そして販売を開始すると、1週間で100万枚の売上。累計230万枚以上を出荷したそうです。

「THIS IS IT」を観たことがある方も多いと思いますが、その舞台裏にこんなエピソードがあったなんて驚きです。

働いているなかで「常識じゃない」と突き離されたり、「データ」上はそうならないと言われ、やりきれない気持ちになったことは誰しも1回はあるのではないでしょうか。「常識」や「データ」も大事なことだと思いますが、それらに縛られすぎては新しい道は開けないのかもしれません。

著書『差異力 知らないことは武器になる』(総合法令出版)

THIS IS POINT! 不確実時代を生き抜くために


不確実時代を生き抜くために。伊藤氏が最後のまとめで挙げていたポイントは下記5項目です。

1.比較基準を常に持つ
  ―自分自身が何を担っているのか(他者との比較)、キャリアパス(目標とする人を持つ)

2.自身のリスクを知る
  ―時間は有限である、戦う場を心得る、鏡の中の自分

3.必ず時間軸を持つ
  ―ビジョンを持ち逆算する事から始める、最初の90日ですべて決まる、人生は一度きりと知る

4.自分のポジショニングをする
  ―引っ張る側か引っ張られる側か、感覚を信じる、自分を好きになる

5.常に自分(感覚)を磨く
  ―アンテナを張る、道具を備える、π型(パイ型)の人間になる

「π型(パイ型)の人間になる」とは、専門分野を2つ以上持っている人のこと。

一方で「I型人材」「T型人材」というカテゴリーもあります。「I型」は、1つの専門分野を持っている人材。「T型」は、1つの専門分野を持ち、加えて、幅広い知識を持っている人材。

しかし、先ほどの話にもあったように「I型人材」「T型人材」では対応できなくなっていくのがVUCAの時代。その時代に活躍できるのが「π型人材」です。

T型より進化した「π型人材」は、複数(2つ以上)の専門分野を持ち、加えて幅広い知識も持っている人材を意味します。これからの不確実時代は、専門分野1つしか持っていないと、足をすくわれるとのお話でした。

また、「コンフォートゾーン(居心地の良い場所)から抜け出す」「自分の人生を他人に委ねない」「自分の違和感と感覚を大切にする」という話もありました。

伊藤氏の著書『差異力ー知らないことは武器になるー』にもこんな記述が。

違和感は直感でもあり、肌感覚でもある。「何かが違う」「何かしっくりこない」「いやだ」。そういう直感を妥協せずに信じて、「違ってもいいんだ」を意識することが大切だ。それが発想力と行動力につながる。それが差異力になる。(『差異力ー知らないことは武器になるー』より)

そういった違和感を捨て去らず、自身の肌感覚を大切にしながら働くことが、これからは”武器”になるのかもしれません。

記事:河口茜(シゴトゴト編集部)
写真提供:Story Design house株式会社

伊藤嘉明(いとう・よしあき)氏のプロフィール

X-TANKコンサルティング CEO。世界のヘッドハンターが常にその動向を注視するプロ経営者。2015年「日経ビジネス」の「次代を創る100人」に選ばれる。
2016年X-TANKコンサルティングを設立、代表取締役社長に就任。「自己覚醒、日本覚醒、アジア覚醒」をテーマに、規模や業種を問わず、日本企業の再生に取り組んでいる。1969年タイ・バンコク生まれ。アメリカ・オレゴン州コンコーディア大学マーケティング学部を卒業後、タイへ帰国し、オートテクニックタイランドへ入社。サーブ自動車の総輸入元として高級車の企画・販売・営業全般に携わった後、渡米し、サンダーバード国際経営大学院ビジネススクールにてMBA(経営学修士号)を取得。以後、外資系企業の本社及び日本法人にて要職を歴任する。

読みもの&流行りもの: 2017年12月26日更新

メルマガ登録いただくといち早く更新情報をお伝えします。

メルマガも読む

LINE@はじめました!

友だち追加
このページを気に入ったらいいね!しよう
はたらく私のコンパス《170種類の職業体験》 
あわせて読みたい

Follow Me!


PAGE TOP