2017年12月18日更新

働くあなたを”あと押し”するオンナたちの言葉vol.1-銀座「おでんBarござい」のママは、なぜいつも前向きでいられるのか?

「好きなことを仕事にする」はいつも些細なきっかけから。必要なのは人並み外れた勇気や特別な才能ではなく、まず目の前のスタートラインに気づくこと。

この連載では、その一歩を踏み出した女性たちを訪ね、あなたを後押しする言葉をもらってきます。

ホッとひと息つける銀座の「おでんBAR」


ここは銀座6丁目。華やかな歓楽街から少し離れた大人の落ち着きを放つ静かな飲み屋エリア。あるビルの最上階である5階にある7坪弱のバー「おでんBarござい」。

銀座におでんって、なんだか似つかわしくないよね…とびっきりおしゃれしてきた私、なんか場違いかも…

扉を開けると、優しい声で「いらっしゃい、こんばんは」とママの声。見ればエプロン姿で、いかにもお母さん、という雰囲気。声も優しければ、笑顔も優しい。

ああ、なんか落ち着く。銀座って、華やかなイメージがあった私。「銀座のバーに行くぞ!」って誘われてここに来たら、「銀座でもこんな落ち着くところがあるのね~」なんて、カウンターの下で靴を脱いでしまいそうだ。

ママのおでんは、家庭の味付けで美味い。ママの歌は、鳥肌が立つほどに上手い。こぶしが利いているというより、教育テレビで流れるような童謡を歌うプロの人みたい。ママが歌う「花は咲く」は、うるっとすること間違い無し。

ホッと一息つきたくて、ふらっと立ち寄りたくなる、そんな親しみやすいお店だ。
 
「おでんBarござい」のママは城倉智子さん。おんとし60歳。たった一人でこのお店を切り盛りしている。今日私は城倉さんに「あと押し」の言葉をもらいにやって来た。


銀座・おでん・カラオケ、そして優しいママ。このハーモニーがたまらない

50歳で“食堂のおばちゃん”から”銀座のママ”へ転身


ーーお店を始めたきっかけはなんだったのでしょう?

「ちょうど10年前、たまたま前職の社長と飲みに銀座を歩いていた時に、貸し物件としてここの場所を見つけたの。社長から『あんた料理作れるし、歌も歌えるんだからママやってみたらいいじゃない!』って言われたのよ。それがきっかけね」

前職では、知人である社長のつてで、とある企業に入社。社員はほとんど若い人だったが、働き詰めで食生活が乱れている社員が多く、いつからか、ママが社員の食事担当になったそうだ。

「わかりやすく言えば、食堂のおばちゃんのようなことをやっていたのよ(笑)
 料理だけはできたからね。それ以外の仕事らしい仕事は何もできなかったわ」

ただ、ずっとこのままじゃあ…という気持ちも確かにあったそう。他にできることも思いつかない。

「社長に勧められたし、やってみるかあ、というような割と思いつきに近かったかな」

「銀座のママ体験」を楽しんでくれたお客さんに救われた


——今年で10周年を迎えた”おでんBarござい”。ずっと、お一人で切り盛りされているのですか?

「そうね。でも私は足がよくなかったので手術とリハビリのために何週間かお店を空けたりした時もあった。それで私がいない間、信頼している常連の女の子に自由にお店を使ってもらってもいいことにしたの。

彼女達は、お店のお留守番をしながら、会社の上司や同僚を連れてきたりして、楽しんでいてくれた。ございを守らなきゃ!ママを助けなきゃ!という使命感から、そういうことをしていてくれていたの。彼女達には本当に助けられましたね」

仕事旅行風に言うなら、「銀座おでん屋のママになる旅」を自主的に開催したようなものだが、そうやって常連さんたちがお客さんを繋いでくれたおかげで、ママが復帰した後もお客さんは忘れずに立ち寄ってくれたそう。

前向きな気持ちで行動してることを、お天道様はちゃんと見ている


そうやっていろんな人の助けを借りてお店を続けてきたママだったが、お店を始めて1年くらいはお客さんも少なく、さすがに落ち込むことも多かったそうだ。

「『もう辞めようかな』ってことばかりを考えていた時はね、『次は何しよう』という風に前向きな気持ちになれなかった。そうすると、更にお客さんの足も遠のいていた感覚があった。お客さんと楽しく話ができず、負のオーラを出していたんだから当然よね」

明るいママと常連さんでいつも賑わっているイメージの「ござい」からは、想像しがたい。そんな時もあったんだ。

「反対に、『なるようになる』と前向きな気持ちでいる時って、うまくことが運んでいくの。なるようになるんだから、先のことをあれこれ考えて不安に思う必要はなくて、目の前のお客さんと、会話や歌を楽しめばいい。

それを心がけていると、不思議とお客さんも来てくれるようになった気もして。前向きな気持ちで行動してることを、お天道様はちゃんと見てるんだなって思ったわ。私も落ち込むことはあるけれど、深く悩む必要はないってことを知ったわね」

——何か目標にしていることや夢はありますか?

「わたしは100歳でもママをやっていたい。少し前に、銀座にそういうママがいて有名だったのよ。わたしはその2代目になりたいわ。

もしママじゃなくても、カウンターの隅っこに座って、カラオケを歌ってる人を勝手に採点して 、下手だと途中で強制終了したりしたいわ。そんなムカつく名物お婆さんもいいなぁって思ってる(笑)」

今日のあと押しワード:なるようになる。前向きな気持ちがあれば十分。

ママは「前向きな気持ちがあれば十分」と言った。でも、どうやればママのような前向きさを実践できるのだろう? 口で言うだけならそれは簡単なことだ。

もしかすると、ママは自分が前向きになる以上に、人を前向きにすることが好きなのではないだろうか?社員のために料理を作ったり、お店に来るお客さんを笑わせたり。そんなホスピタリティがあるママだからこそ、困ったときも人に助けられ、親切の連鎖がママに”前向き力”を与えているのかもしれないと私は感じた。


「おでんBarござい」のママ・城倉智子さん

おでんBarござい
住所:東京都中央区銀座6丁目4−14HAOビル5階

記事:松本千秋

※この記事は仕事旅行社による「編集職人募集プロジェクト」 のトライアルとして作成されたものです。
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