「223(つつみ)雑貨店」は、就職氷河期世代の店長さんによる開業までの貴重な体験を聞ける人気の仕事旅行先です。
★雑貨店店員になる旅ー思いついたら即行動。楽しめる雑貨店を生み出すアイデア力とは?ー
ひとりでお店を切り盛りする店長に、仕事旅行の旅先としてのおもしろさと開業からの6年に起こった変化について聞きました。
作家さんを旅人として受け入れたこともあります
「オープン当時、小学生だったお客さんも今や高校生。なかには、これは彼氏へのプレゼントかな?という買い物をしていくお嬢さんもいます。ランドセルを背負っていた子が…。大人の6年とのスピードの差に驚きますね」
京王線桜上水駅からほど近く。日大文理学部のキャンパスが近く、学生が行き交うことも多い一角に223雑貨店はある。お店がオープンしてから街並みにも変化があった。目の前にあった古い公団住宅が取り壊されて、大規模な高級マンションに姿を変えた。
「周囲はどんどん入れ替わる。私はお店から出られないけど、いろんな人の人生が出たり入ったりしている」
出入りするのは、お客さんだけではない。223雑貨店は仕事旅行の旅先として、30人ほどの旅人を受け入れてきた。その中には店長にとっても新鮮な驚きのある旅もあった。
「日本全国、そんなところから?と思うような場所からも来る方もいます。就活中の大学生が、わざわざ関西から来たこともありました。就活で仕事旅行というのもおもしろいですよね。ものづくりをする方が旅に参加されたこともありました。『普段はものを作っているけど、売る側を経験したい』と。作家さんと一緒にお店に立つのは初めての経験でした」
旅先になる前は不安も感じた。
「ひとりでやっている店の内側に別の人が来るわけですから大丈夫かな、と。でも、やってみたら受け入れ側にもメリットがありました。始めたばかりのときの気持ち、初心を毎回思い出します。それにお金を払って来てくださる。これってすごいことですよね」
外からの刺激が"私の現在地"を気づかせてくれる
223雑貨店の仕事旅行のゴール(旅の課題)は、2ヶ月先のフェアを企画することだ。店長が思いつくはずがないアイデアが出てくることもあるという。
「ある旅人さんに4月のフェアを考えてもらっていたとき、4月10日が元日から数えて100日目だと発見してくれました」
実現したフェアは次の新しい100日を応援する、その名も『NEW 100 steps』。
「次の100日をお店の商品でグレードアップさせる提案になりました。他にも旅人さんと考えたフェアは、常連のお客さんからよくつっこまれます(笑)」
コミュニケーション上手でお客さんの悩み相談にものってしまう店長。旅人との会話も弾み、店長自身の"現在地"も明らかになったそうだ。
「雑貨好きな旅人さんからは、雑貨屋さんの探し方や、知らなかった雑貨屋さんの情報を教えてもらうこともあります。自分がいつもこの10坪の店にいる。そのことに満足していましたが、いつの間にか、外の世界の情報を得る方法を忘れていたことに気が付きました。新しい刺激が外からやって来る感じです」
10坪のお店を10年続けるためのリフレッシュ
旅人に影響された面もあるのだろうか? オープン5周年を間近に控えた2017年夏、223雑貨店は初めて1ヶ月もの長期休暇を取った。ひとりでやっている店を1ヶ月も休むというのは、かなり思い切った決断だ。
「お店から出られないことをストレスに感じたこともあって、外に出たくなりました。去年は1週間の旅行に行ったんですけど、そうしたらもっと旅をしたくなってしまって。1ヶ月の旅行のハードルが高いなら、全然違う景色の中で働けばいいじゃないか!と」
店長自身の旅先は、なんと群馬県のキャベツ農家。住み込みで農作業をするアルバイトが旅のメインだった。
「嬬恋村は、とてもきれいなところでした。午前2時起きの農作業は体力的にはきつかったですけど(笑)」
日が昇る前の満天の星空の下でキャベツを収穫して、休みの日には温泉に入ったり、滝を見に出かけたり。普段の生活とは、まるっきり違う1ヶ月を過ごした。
「1ヶ月間、雑貨を売る以外のことをして脳が完全にリフレッシュされた感じです。休む前はアイデアを出す力がなくなっていた。どんな新商品を仕入れたらいいか、商品をどう並べたらいいか、考えられなかった。帰って来た途端、サクサク進むようになりました」
店長はお店を10年続けることを自分に約束している。そのためにはこれからもときどき休むかもしれないという。ただ、お店をやめたいと思ったことはないと言い切る。「目標だった10年が経ったらどうするのですか?」と聞いてみた。
「いちばん理想的なのは、10年経ってもやめたくないと思って、老後までずっとお店をやることですね。なにが起こるかわかりませんけど…」
「お店は、始めてしまったら自分勝手に閉められないもの」
店長からはそんな言葉が出てきた。223雑貨店はいまやこの街に欠かせない存在、風景の一部になっているのだろうと感じた。
記事・写真:野崎さおり
※この記事は仕事旅行社による
「編集職人募集プロジェクト」 のトライアルとして作成されたものです。
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