さあ、オリンピックシーズンですね。日本は水泳で金メダルを取るなど早速盛り上がっていますが、スポーツに燃えるのは、これはもう人類共通の本能みたいなものなのでしょう。
先日、五輪でメダルを2度獲ったことがある元アスリートの方にインタビューしたところ、「『スポーツ・ミュージック・アート』は人間が一番人間らしく生きていけるように促してくれるもの」といった話もされてました。
オリンピック観戦に夢中で「仕事が手につかない」という方も多いのでは? 今回は「カンヌ・ライオンズ」で受賞したプロジェクトから、「五輪観戦がもっと味わい深くなる」動画を3つピックアップします。
※当連載のバックナンバーは記事下部に。
アホらしすぎて震えるレベル…
スポーツは見ているとどれもアツくなってしまうものですが、ときに人々をクレイジーなまでに熱狂させるのは、なんと言ってもサッカー。
なかでも今回の五輪開催国であるブラジルやイタリア人の国をあげてのサッカーラブっぷりは、まあ「ちょっとありえないんじゃない?」と思えるほどのレベルですね。
実は過去、W杯の開催中に(2006年)、たまたま仕事でイタリアに滞在していたのですが、そのときとんでもない出来事に出くわしたことがあります。
準決勝でイタリアが奇跡的な逆転ゴールを決めた瞬間、ちょっと地震か? と思うほど街全体が物理的に震えました。マジで。中世から続く石造りの街に「ゴゴゴーッ!」みたいな地響きが走ったんですよね。
もはや「一斉に大歓声が湧き上がる」とかそういうレベルではなく。その後は朝までとんでもないドンチャン騒ぎとなり、軽く命の危険さえ感じたほどでした。
今年も開催されてましたが、前回のユーロ杯(2012年/UAFA欧州選手権)のときも「見事決勝にコマを進めた!」ということで、ローマ国立劇場の演し物が当日あっさり延期になってました。日本ならさしずめ「大事な試合があるので、本日、歌舞伎座はお休みです」みたいなことでしょうか?
まあ、開演しても人来ないんでしょう。
あまりに強烈な2体験だったので前置きが長くなってしまいましたが、イタリア人のそんなサッカー熱が伝わってくるという意味でぜひご覧いただきたいのは、ハイネケンがプロデュースした次のイベント動画です。
超仲良しのイタリア男子3人組が、自分たちの「友情の絆」と考えているのは、UAFAのチャンピオンリーグを3人そろって部屋で見ること。しかもソファに並んで座って。部屋飲みならぬ部屋応援が3人の連帯感を高めるようです。
「スタジアムに足を運ぶのではなく、部屋で並んで応援するのがオレたちの流儀ってもんなんだ!」というわけです。たんにチケットが入手できないことへの負け惜しみかもしれないのですが、その”伝統”に背くことは許されない。
しかし、そんな彼らに試練のときが訪れました。謎の男が登場し、3人のうちの1人に、ほかの2人には内緒で「ローマvsレアルマドリッド戦」のVIPチケットをプレゼントしてしまったのです。
「残念なことに仕事があって行けないんだ。替わりにオレの会社の同僚たちと行ってくれ」と。激レアなプレミアチケットです。
さて、その後どうなったでしょう? コトの顛末は動画で確かめていただきたいですが、アホらしすぎて逆に震えるレベル。まさにイタリアですね。
仕事なんて人生の金・銀・銅にも入らない
サッカー関連では何年か前に、こんな企画もありました。
こちらは本家ブラジルのサッカーイベント。「スポルチ・レシフェ」という熱狂的サポーターを多数抱えるチームがありまして、どれくらいの好きさかと言いますと、「自分の死んだ後もチームを応援したい!」とまで公言するサポーターたちです。
そこで「スポルチ・レシフェ」は彼らに呼びかけました。「臓器移植のドナーに登録しませんか?」と。
もし、自分の身に何かあったとしても、ドナーとなることでカラダの一部(例えば目の網膜)が移植を受けた人の中で生き続け、その人が試合を観戦すれば、あなたも一緒に参加していることになるじゃないですか? というロジックですね。
その呼びかけに応じ、多くのサポーターが喜んでドナーとなりました。それにしてもスゴイのが、この動画に登場するサポーターたちのアツさ。あるおじさんなど、次のようなコメントを自信満々に言い放ってます(冒頭写真)。
「人生で大切なもの? 最初が神様、次にサッカー、3番目が家族で、仕事とか最後かな?」
仕事の優先順位が低く、人生の金・銀・銅にも入らない。これを見ていると「アリかもな、そういう生き方も…」とさえ思えてくるほどのド迫力です。この顔で言われると妙な説得力がある。
五輪観戦で多少仕事がおろそかになるくらい、どうでもいいことのように思えてきます。
カンヌ・ライオンズにはここで紹介した以外にも、先端テクノロジーものから心温まるストーリーものまで、見ているだけでスポーツが楽しくなるようなプロジェクトがたくさんあります。
しかし、挙げ始めると事例が続々出てきてキリがないので、最後に水泳ものの傑作をひとつご紹介しましょう。こちらはリオ五輪にも出ているマイケル・フェルプスのドキュメンタリーCM。
フェルプスは、今日(8月8日)すでに競泳男子4×100mリレーで金メダルを勝ち取り、史上最多となる19個目の金メダルとなったそうですが、「水の怪物」と呼ばれるそんなアスリートでも、闇の中でもがき苦しんでいる長い時間がある。そして、その闇の中から自分だけのスタイル、自分らしさを見つけ出していく。
たった90秒の映像から、そういったことまで伝わってくる素晴らしい動画です。すでに約600万回再生されてましたが、これを見るだけで五輪をグッと深く観戦できそうな気がしてきます。
記事:河尻亨一(仕事旅行社キュレーター・銀河ライター・東北芸工大客員教授)
(当連載のバックナンバー)
★世界のビッグなアイデア全員集合!クリエイティブ文化祭「カンヌライオンズ2016」に行ってみた vol.1
★人工知能でここまでの“仕事”ができる時代に—「カンヌ・ライオンズ2016」に行ってみたvol.2
★VRで暮らしや働き方はどう変わる?―「カンヌライオンズ2016」に行ってみたvol.3
★社会に力をくれる「新・珍・奇」なアイデアたち―「カンヌライオンズ2016」に行ってみた vol.4―
★一年で一番稼げる日に「全店舗休み! しかも有給」にした会社ー「カンヌライオンズ2016」に行ってみたvol.5ー
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