おかげさまで、読む仕事旅行「シゴトゴト」の公開記事が100本となりました。先週より新たにリコメンドやランキングなどの機能も追加、今後もコンテンツの充実を図ります(お試し広告も募集中)。
今日は100本を記念して、仕事旅行の“ツインズ”(兄:田中航/弟:田中翼)が人生初対談。「少人数のベンチャー企業に双子で所属」というのはどういう働き方になるのでしょう? 本音で話してもらいました。
司会は仕事旅行社キュレーター・河尻亨一が務めます(シゴトゴト編集部)。
性格は違うけどベースは似てるかも
――兄弟で“対談”というのは生まれて初めてだと思うんですが(笑)。双子のブラザーズが同じ会社、しかも少人数のベンチャーで働くっていうのは、ぶっちゃけどんな感じなんですか?
田中航(以下、航):やりづらいですよ。めちゃくちゃやりづらい(笑)。つい余計なひとこと言っちゃったりしますよね。パチパチやり合うこともあるし。
田中翼(以下、翼):僕もやりにくいですね。別に仲悪いとは思わないけど、良くもないですから(笑)。あと、とにかく色んなところで間違えられる。前に会ったことある前提で話しかけられたり。「こんにちは、お久しぶりです」みたいに。
航:それはある。僕もこないだ面識ない人からいきなり「ちょっと痩せました?」って言われた(笑)。
翼:そういうのが余計なひと言なんだよ!
――大丈夫でしょうか、この対談(笑)。顔はソックリですけど性格はかなり違うような。
航:性格に関して言うと、翼は「行動に振り切る」よね?
翼:「思いついたらやってみよう」というスタンスなんです。
航:言い出したら曲げないしね。
翼:自分を曲げないために会社員やめたのに、起業してなんでまた曲げなくちゃいけないの? って思っちゃうから。起業した同じ世代くらいの人たちを見ていても、想いのままに吹っ切った方が上手くいっているケースが多いような気もして。
航:僕はそこまで強いこだわりみたいなものってないんですけどね。よくも悪くもバランサーっていうか、ある程度考えるし、行動もするんだけど、相手がこうしたいって言うんだったら、比較的それに合わせた上で、「自分がやりたいのはココ」って置き方してます。そこは翼と違うかな?
翼:確かに航はバランス感覚があるし、切り替えも早い…なんかオレが分からず屋みたいな方向に持ってこうとしてない?(笑)
航:いやいや(笑)。翼は人の懐に飛び込むのが上手だなって思うんですよね。「なんか面白そうですね、やっちゃいましょ!」って風呂敷を広げてくるんで、その状態から仕事をエスカレーションさせるのはやりやすい。
まあ、性格違うように見えて、ベースの部分は一緒っていうのも感じますけど。「実現したい世界観」は一緒なんだなと。
田中航(Wataru Tanaka)/仕事旅行社事業本部長
僕らのミッションは多様な「働き方」を応援すること
――ではその話を。二人が仕事旅行で「実現したい世界観」について聞いてみたいですね。そこに向けてのそれぞれの役割分担もあると思うんですが。
航:僕が仕事旅行でやってることとしては、イメージで言うと「全体の絵を描く」っていう立ち位置。でも設計だけをやってるわけではなく、具体的には「個人向け・法人向け」っていう、大きく2本柱としてある事業のうち、法人部門のほうを担当してます。
最近「仕事旅行 for business」という企業向け研修事業を立ち上げました。個人の参加者の方々から、「もっとビジネス寄りの観点で学んでいきたい」という声をたくさんいただいてましたから、それをサービスに落とし込んだものです。実際に企業から問合せをいただくことも多くて。
「仕事旅行 for Business」
「プロフェッショナルの仕事現場を訪れて、リアルな空気の中でその人から直接学びを得ましょう」っていうのが仕事旅行の軸だとすると、ホスト(旅の受け入れ先)の持っているマインドや仕事の進め方、知見などは、個人だけでなく企業にも活かせるものだと思うんです。
仕事旅行に参加すると仕事に対する「視点」や「価値観」がガラッと変わりますからね。ただ企業研修の場合、旅の圧倒的な体験で得たインプットをそのまま放置せず、学習によって定着させていただきたいので、体験後にワークショップも設けられるようにしています。社員の方の意識を変えるだけでなく、力を伸ばしにいくサービスが作りたくて。
——「B to C」のサービスとして始まった仕事旅行が、法人向けに拡張していくということに対して、代表としてはどう思ってるんでしょうか。
翼:ごく自然な流れじゃないですか? 「B to C」であれ「B to B」であれ、仕事旅行に参加するのは一人の個人ですから。多様な「働き方」を応援することが仕事旅行のミッションなので、違和感はまったくないですね。
僕は主に個人向けサービスの担当なんですけど、旅の数を増やすことが当面の課題です。どんな仕事でも、それをやっている人にとっては日常的で退屈に思えるかもしれないけど、ほかの人にとっては新鮮に映ります。
そのリアクションに生で接することができるので、ホストさん自身にもすごく刺激になるんです。ホストは常時募集してますから、もっと多くの方に受け入れていただきたいですね。
あと、仕事旅行ならではの「採用支援」をなんとか形にできないだろうか? と思って試行錯誤の最中です。実際これまでも、職場訪問した人がホストと意気投合してそこに就職——というケースがたびたびあるんです。
体験を通じて“適性”を事前に確認し合えれば、雇う側も雇われる側も深くわかった上で働けますよね? 一緒に働いてみて初めてわかる相性みたいなものって大きいと思う。そういう部分は試験や面接だけでは見えにくいのではないかと。
田中翼(Tsubasa Tanaka)/仕事旅行社代表
もっと広く、もっと遠くへ
——色んな可能性が芽吹き始めているようですね。ところで、そもそも最初はなんでこんなこと始めようと思ったんでしょう? 仕事旅行は今年5周年ということなんですが。
翼:最初は思いつきです。僕自身が職場訪問をするのが好きで、色んなところに行くたびに刺激を受けてたんですけど、そうやって企業のオフィスを訪ね歩いた体験が元になってます。
そもそもなんで企業訪問を始めたかと言うと、前職のときに「ああ、自分このままずっとやっていくのかな?」っていう疑問符があったというか。新卒で会社入るとほかの世界がどんなものかなんてわからないじゃないですか。「そこを見に行けるサービスがあってもいいんじゃない?」と思ったんです。
その頃通っていた自由大学でそのアイデアをプレゼンしたところ、いま仕事旅行にいる内田(靖之)が興味を持ってくれました。で、週末のミーティングでアドバイスをもらったりしているうちに、ある程度申し込みが入るようになり、手が回らなくなってきたのでジョインしてもらって。
ウェブエンジニアの早川(真吾)は中学の同級生で、仕事旅行の構想を形にしようってときにサイトを開発してもらったのがきっかけですね。
早川真吾(左)/内田靖之(右)※職業体験中のひとコマ
――現在はそこに航さんを加えた4人で主に回しているわけですが、航さんはどのタイミングで?
航:2年くらい前ですね。僕、前職では高校生に向けて進路情報の提供をする仕事を担当してたんですが、「その人らしい人生設計ってなんだろう?」というのが、もともと自分の中のテーマとしてありました。
その仕事もやりがいはあったんですけど、いいタイミングでいい情報を届けても、「結局、自分らしさより、ブランド感や偏差値に引っ張られて、自分の軸を持てない人が多いんじゃないか?」っていう疑問も持ち続けていたんです。自分の中の軸が定まってないと、人って自信持てませんよね。
そういうこともあって、「自分の軸作りのサービス」に携わりたいなあって思い、転職活動をしようとしたときに気づいたのは、「そう言えば仕事旅行って、自分の軸作りのサービスだよなあ」ってこと。その頃にはある程度サービスの方向性も定まり始めてましたから、ビジネスとしてもっと大きく具現化していく手伝いができるんじゃないか? と考えたんです。
——私も去年秋くらいから編集や情報発信の面でお手伝いしているわけですが、確かにオフィスの空気から、仕事旅行が2ndシーズンに入り始めているなというのは感じます。さっきの研修事業や採用支援、個人向けの長期旅シリーズ、この「シゴトゴト」など新規プロジェクトも続々立ち上がってますしね。
比喩として言うと、2010年代初頭にたくさんデビューした“バンド風”のベンチャーからの脱皮が始まっているというか。スタッフも増えてきて新橋のオフィスがキツキツになっている(笑)。
翼:“バンド風”のベンチャー(笑)。まあ、どこまで脱皮できているのか? 自分たちではつかみかねてますけど、僕の担当パートで言うと「長期旅」は手ごたえを感じてますね。もともと「長期をやってください」というお客さんからの声って結構いただいてたのですが、やっとそれが実現し始めています。
長期体験だと、「訪問して刺激を受ける」だけでなく、実際にアクションまで起こせるレベルのスキルを身につけることも可能ですから、これから力を入れて行きたいですね。ユーザーの方々もそうですし、僕ら自身「もっと遠くまで行けるはず」って思ってます。
※現在募集中の長期旅(4月4日現在)
①【5日間連続】あなたのシェアハウス設立プランを作る旅
②3か月・12回の短期集中セッションを経て、自分ブランドを確立する
——もっと遠く。そのへんからして旅行ですね(笑)。二人にとってどのへんが未来の目的地ですか?
翼:とはいえ、正直その場しか見えてないんで(笑)。計画や未来像といった大げさなことではなく、「いまやりたい」「やれること」をやりつくしたらどこかに到着するはず、という発想なんですよ。自分の大学の友だちや前職の同期から「使ってるよ」と言われるくらい、広がって行く状況が作れたらいいなとは思うんですけど。
航:僕もそこは翼に近しい感じです。ひとつあるとしたら「ビジネスとしてもっと洗練されたものにしてきたい」ですね。
さっきバンドの比喩がありましたけど、いままでは「音楽の方向性をどこにする?」っていうので、「ここだ!」ってジャンルを決めて地元のライブハウスで演奏してましたと。で、ここからはその音楽をより広めていくために、戦略的に展開する段階に入っている気がしていて。そこがなかなか難しいんですけど。
「航」と「翼」—その名に秘められたメッセージとは?
——「インディーズからメジャーへの旅の途中」みたいなことかもしれません。ところで、前から面白いなと思ってるのは、「航」と「翼」で、名前が二人とも“旅”っぽいじゃないですか。しかも海と空で。これはなんなんでしょう? 田中家の戦略? ご両親が“仕事旅行”のほうへ仕向けたかったのか?(笑)
航:わかんないです(笑)。
翼:名前の由来は親からもあまり聞いたことないですね。航が仕事旅行にジョインすることに関しては、「一緒にやったほうがいいんじゃない?」って逆におすすめしてきましたけど。
ごく平凡な家庭なんですけどね。でも、子供の頃から「やりたい」って言えば、けっこう自由にチャレンジさせてもらえる環境ではあって、そこは有り難かったなと。
航:確かに、チャレンジさせてたかも。それがよかったのかなって思います。例えば、僕は高校のときにアメリカ一年、その後ワイン作りたくてフランスに一年いたことがあるんですけど…
翼:航はおシャンティなんですよ(笑)。僕みたいに趣味が釣りとか場末のバーめぐりとかじゃなくて、昔から突然サックスとか買っちゃったり、いまもジム通いですから。たぶんこれもすぐ飽きると思うんですけど(笑)。
航:いや、そういうことが言いたいんじゃなくて。いま振り返ってみると、やっぱりチャレンジすることで色々見えてくるでしょ? 「これが好きで、これが嫌い」だとか。
けど、やらなきゃ何もわからない。その場に立ち尽くして時間だけ過ぎてしまう。続く、続かないに関わらず、やってみることで自分の思考が形作られてくような気がしています。
フランスに行こうかどうか迷ってるときって、何も前に進まなかったんですけど、「行っちゃえ!」と思って現地を体験すると自分の中でフィードバックやブラッシュアップが起こるんですよね。
日本の学生が向こうでワイナリー体験しようなんて、けっこう向こう見ずな考えだったかもしれないけど、行くと考えるし、行動もしますから。実際ワイン作りの工程をひと通り見られたのは僕の財産になってます。
で、〆なんですけど、体験で価値観がガラッと変わったり、固定概念が崩れて新しい自分に出会えたり——というのが、やっぱり僕らに共通するものとしてあるのかな? って。
翼:自分が興味のあるものに対して「アクションしない」っていう選択肢はまずあり得ないですよね。やってダメならやめたらいい。「やりたいことをやらないままなんて、せっかくの人生もったいないじゃない?」というスタンスは、似た者同士なのかもしれません(笑)。