2020年02月10日更新

“即レス”時代にあえて手紙を書く人たち。「スローコミュニケーション」を選択する理由とは?

コミュニケーションは今、「早くて簡潔」が好まれる時代だ。

素早く短文で意思疎通できることは便利な一方、絶え間なく連絡を取り合うことに気疲れしてしまう人も多い。そんな中、ビジネスの世界であえて「手紙」を使ったコミュニケーションを選択する人がいる。

“即レス”が喜ばれる時代にあえて手紙を使う理由とは? クリエイター、宿泊業、営業職という全く異なるフィールドで活躍する3人に話を聞いた。


「SNSでのやりとりを手紙に変えたい」


(Instagramより引用)

「文チュン(文通)を始めようと思っとります」

そう話すのは、野鳥の魅力を伝えるべく、鳥の製品の企画やワークショップなどを行う、株式会社鳥(とり)のスズメ社鳥だ。鳥をこよなく愛するスズメ社鳥は、スズメの頭をかたどったヘルメット(スズメット)や巨大なスズメ型バルーン(メガ・チュン)などのユニークな製品を企画している。個性的な作品やスズメ社鳥のユーモア溢れる人柄に惹かれるファンは多い。

作品のビジュアルにはインパクトがあり、SNSとの相性は良さそうなもの。ところがスズメ社鳥は「SNSでのやりとりを減らして、手紙に切り替えたい」と考えているそう。「少数でも顔の見える人と繋がった方がいいなと。手紙の文面の方がお互いの気持ちや、人柄もわかる気がします」。



「文チュン(文通)」の具体的なサービス内容は固まっていないものの、既に「スズメ社鳥と文通をしてみたい」という人から10人ほど申し込みがあったとのこと。「鳥の話はもちろん、世間話もゆるゆるとできれば、お互い負担なく楽しめるのではないかと思います」


「予約方法は手紙だけ」の人気宿


(Instagramより引用)

岩手県野田村にある『苫屋(とまや)』は、手紙でしか予約できない民宿。ネットはおろか電話も繋がらないにもかかわらず、ここならではのおもてなしを楽しみたいと、予約を申し込む手紙が次々と寄せられる。

著者は人生初となる手紙取材を試みたところ、ご丁寧にお手紙で回答をいただいた。「なぜ手紙の予約しか受け付けていないのでしょうか?」と聞くと、その理由は「苫屋を始めた27年前に電話がなかったので、そのまま引かずにいるだけです」とのシンプルなものだった。

手紙でのやりとりをしていてよかったことを聞くと、次のような回答だった。

「お客様と受け手である宿との間に『楽しみながら待つ』という時間があることかな?」

すぐに返事が返ってくることが前提のコミュニケーションに慣れていると、相手からの返事を待つ時間はどうしても不安になってしまう。ところがすぐに返事が返ってこないのが当たり前ならば、待つ時間は「不安」ではなく、「楽しみ」な時間に変わるのかもしれない。



苫屋さんは「出会いを含めた全てのこと、もの、時間を大切にしたい」と手紙で語る。「手紙とネットや電話との違いは何だと思いますか?」との質問には、次のような回答が記されていた。

「手間と時間のかかる手紙のほうが、相手を想う気持ちが多いのではありません? 便箋、封筒に始まり、切手を選ぶという時間に相手を想います」


「時間の溝を埋める」手紙を営業で活用



プルデンシャル生命保険で営業を務める猿樂昌之さんも、ビジネスで手紙を活用する一人だ。プルデンシャル生命保険・品川第四支社で営業を務める猿樂昌之さんも、ビジネスで手紙や葉書を活用する一人だ。

猿樂さんが専門とする相続の領域は専門用語が多く、知識一辺倒のコミュニケーションでは息苦しくなってしまいがち。手紙や葉書を使うのは、「お客様との心の距離を縮めるため」。実際に目の前で普段お客様に送っている葉書を書いてみせてくれた。

猿樂さんは何も印刷されていない無地のカードを取り出すと、数種類の筆ペンを使い分け、丁寧に書き上げていく。現在の形式にたどり着いた経緯を尋ねてみた。

「私の送った葉書をお店に飾ってくれていたお客様がいたんです。手紙や葉書は一方的に感謝を伝えられること、自分に手間をかけてくれたということで、思いのほか喜ばれるものだということを知りました。それなら、さらにお客様に喜んでもらおうと思い、改良を重ねてきました」

「手紙や葉書は役に立ちます」と猿樂さん。「例えば、お客様との面談と面談の間に期間が少し空くとき。少し心の距離が開いたような気になりませんか? そんなときは間に手紙や葉書を送っておくと、お客様はより身近に感じていただけると思います」

手紙だけでなく電話やメルマガなど、さまざまな連絡手段を使いこなす猿樂さんにとって、手紙は「一番丁寧なコミュニケーション」。相手との関係を縮めたいときや、時間の経過でできる心の溝を埋めたいときに活用している。


“即レス”から自由になるために

ファストコミュニケーションが当たり前の時代、連絡を取るという行為は、それだけで「相手にすぐに返事を求める」という無言の圧力を発生させているように思う。

でもコミュニケーションは本来、相手を苦しませるためにするものではない。むしろ「理解している」「気遣っている」気持ちを伝えることで、お互いに安心するものだ。

「返事をしなくてはならない」プレッシャーから逃れるために、外界との連絡を絶ちたいと考える気持ちもわかるが、それは連絡手段がファストコミュニケーションに偏っているからだろう。

今の時代“即レス”を完全にやめることは立場上難しい人は多いと思う。でも、ここぞというときに「手紙」という極端なスローコミュニケーションを試みるのは面白そうだ。

器用に連絡方法を使い分けられるセンスは、相手との距離を縮めるだけでなく、自分自信をコミュニケーションの苦しさから自由にしてくれるかもしれない。

(取材・文、一本麻衣)
仕事旅行ニュウス: 2020年02月10日更新

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