作家の森まゆみさんによる連載。『地域雑誌 谷中・根津・千駄木』を1984年に創刊、「谷根千(やねせん)」という言葉を世に広めた人としても知られる森さんが、雑誌創刊以前からこの町に"ずっとあるお店"にふらりと立ち寄っては店主にインタビュー。今回は「根津のたいやき」さんにお邪魔しました。(編集部)
不忍通りのビルの1階にそのたいやき屋がある。一時は長い行列ができたが、今また少し落ち着いて、いつも2、3人が順番を待っている。元は「柳屋」といった。地域雑誌『谷根千』が始まって以来、ずっと雑誌を置いてくれた店だ。
「もう、お袋の13回忌をやったくらいで。親父は来年。でも、いまだに『お母さん、元気?』なんて言われるんですよ」
――林ヒサさん、本当に、声のきれいな、おおらかなお母さんだったもんねえ。今でも耳にあのソプラノが響くわ。
「この店は1957(昭和32)年、人...
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