2017年09月22日更新

SXSWに集まる未来の予兆ー未来予報コラム①|10年後、あたらしくできる仕事を見に行く

10年後。私たちの仕事や働き方はどうなっているのでしょう? 世界最大級のビジネスカンファレンス&フェスティバルSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)にはそのヒントがあります。

この連載では、6年前から現地を取材し、この夏『10年後の働き方「こんな仕事、聞いたことない!」からイノベーションの予兆をつかむ』を上梓した「未来予報株式会社」のお二人(曽我浩太郎氏・宮川麻衣子氏)が、10年後を大胆予報。"社会のいま"を考えるコラムとしても読み応えアリです(シゴトゴト編集部)。

※冒頭写真はSXSWの風景。一見お祭りのように見えるビジネスイベント。ルーツが音楽フェスだということがよくわかる(写真提供:未来予報株式会社)。

SXSWでの話題は、およそ2年後に日本でも注目される


2分のピッチが終わると歓声と拍手で称えられる。

世界最大級のビジネスカンファレンス&フェスティバルSXSW<サウス・バイ・サウスウエスト>で見ることができるごく普通の光景です。世界を変えるような仕組みをつくれる人は一握りしかいません。だからこそ、それに敢えて勇気と持って挑戦する若き起業家たちに惜しみない拍手を送ります。敬意を持って称えるこの瞬間に、いつも新鮮な気持ちを感じることができます。

拙著『10年後の働き方「こんな仕事、聞いたことない!」からイノベーションの予兆をつかむ』では、SXSWで出会ったスタートアップ企業や研究者から、10年後の仕事を想像し、50個の事例を挙げました。その年によって注目されるテーマや分野が変わります。毎年面白い取り組みを行う人たちに出会うことができます。中には10年どころか50年、100年先の世界のビジョンをもった人たちもいます。

私たちは6年前から、この一風変わったカンファレンスの虜となり、毎年参加するうちに、未来の予兆を感じ取り、それを予報という形で出すようになりました。

SXSWで話題になったことは、大体2年後に日本でも注目されます。過去には、Siri、airbnb、Pinterest、Instagramなどのサービスが、SXSWで注目され、CEOが講演したり、accelerator award(スタートアップのピッチイベント)で受賞したりしました。

2017年現在、これらは私たちの日常で普通に使われるサービスとなっています。同じ要領で、もう少し想像力を使って、10年後に生まれているかもしれない仕事や働き方をつくり出しまとめたのが『10年後の働き方』です。


SXSWの様子

コンフォートゾーンを抜け出せ


実際にSXSWを歩くと、ハイペースで色々な考えやアイデアが浮かび、行動に移したくなります。私たちもSXSWがきっかけで起業したと言っても過言はないかもしれません。

では、SXSWをSXSWたらしめる空気はどこから来るのか。それには主催者側の強い思いがありました。SXSW2016で、SXSW InteractiveのディレクターであるHugh Forrest氏にインタビュー行なった際の映像をご覧ください。

※動画URL→https://www.facebook.com/miraiyoho/videos/994026497398913/

Hugh Forrest氏の言葉の中には、これから自分が情熱を燃やしてやりたい事をやっていくためにも重要だと思う言葉があります。

多種多様な人・コンテンツ・ビジネスが集まるSXSWでは、自分とは異分野の人たちとの交流を促しています。何かのエキスパートの人は自分の分野だけ見るのはやめて、異分野のものを見にいってほしいのです。思いもよらなかった人との出会いや、新たな視座は、いつも自分の領域の外からやってきます。ー Hugh Forrest


SXSWのスタッフと話すと「コンフォートゾーンを抜け出して、新しい物事に触れること」がいかに大事かという話題が出ます。SXSWは多くのスタッフとボランティアで運営されていますが、同じ思いを持って取り組んでいるんだということがわかります。

コンフォートゾーンとは居心地のいい場所、もっとわかりやすく言えば、ぬるま湯と言ってもいいかもしれません。自分の領域外の事は知らない事も多いので、新鮮な気持ちで敬意を持って、人の話を聞くことができるし、何より、新しい発見は興奮するものです。

しかし、長年SXSWに参加してもう一つ大事な事があると気付きました。コンフォートゾーンを抜け出して、人に出会って、新しい分野の事を根掘り葉掘り聞く…それで終わりではなく、自分の専門分野についても、しっかり相手に伝えるべきです。”交流”というのは相互に情報を行き来させることだということを、つい忘れがちになります。情報くれくれ君では、新しい発見は無理だと、端から見て思います。


SXSWの様子

SXSW2018で出会える新しい視座ーいま世界が注目する4人の"未来予報士"


著書ではSXSW2017までに出会った人やサービス・デバイスから選りすぐっていますので、ここでは来年SXSW2018のスピーカーに決まっている方々から、これからの仕事や働き方を考える上で役に立ちそうな話をご紹介したいと思います。

日本でもベストセラー「シリコンバレー式 自分を変える最強の食事」著者|デイヴ・アスプリー氏

朝食に飲むバターコーヒーを考案し、ダイエット本の著者として知られるデイヴ氏は、Bulletproof社の創業者兼CEOです。食事やサプリメントとテクノロジーを活用して、いかに自分の肉体を”ハック”して、健康でパフォーマンスの高い生活を手に入れるかということを説いています。

日本でもトレーナーがついて、食事や運動のコーチングをしてくれるサービスが流行していますが、今後は単に痩せたいというニーズではなく、食事や運動によって、生活を改善し、仕事にも良い影響を与えることができるタイプのトレーナーが求められるようになりそうですね。

浮気とは何かを説いたTED講演が800万回再生を超える愛情セラピスト|エステル・ペレル氏


エステル・ペレル氏のTED講演動画「長く続く恋愛関係における欲望の秘訣」

心理学者のエステル氏は、現代の愛について最も洞察力のある研究者の一人と言われています。現代、過去に例を見ないほど不倫する傾向が高まっているのは、人が新たな欲望を抱いたと言うより、欲望を追い求める権利があると思える時代だからと話しています。

確かに、簡単にSNSで繋がることができて、連絡手段も様々ある状況では、より自由に、そして別の自分を楽しむかのように、浮気をしてしまうのかもしれません。人々は今、肉体的な欲望より、精神的なスリル、安心、自由さを求める傾向にあるようです。出会い系アプリも普通に使う時代です。愛とその周辺に関する話を聞いて、何かサービスを思いつくヒントになるかもしれません。

アリアナ・グランデやThe Weekndなどに楽曲提供、グラミー賞にノミネートされたソングライター|サヴァン・コテチャ

最近では、Spotifyのグローバルトップ10に入る曲のほとんどがプロのソングライターが全て書いたかまたは共作です。作曲の欄はたくさんの名前が並んでいるのをよく見かけます。音楽ビジネスの根本を支えるソングライターの存在。SiaやSam Smith、Bruno Marsなど楽曲提供をしながら、自身の音楽活動で花開くパターンも多くなりました。

そんな中、サヴァン氏はソングライター職人として数々のヒット曲を生み出しています。彼の作品リストを見て驚きました。ほとんどが知っている曲で、買った楽曲も多く含まれていました。インド系アメリカ人であるサヴァン氏は、伝統的な事を重んじる家族から、進路について大反対を受けたそうです。どのように自分を貫いて、今のヒットメーカーになったのか、参考になる話になるのではないかと思います。

企業向けのプラットフォームやサービスを提供するブロックチェーン企業Consensys CEO|ジョセフ・ルービン

『10年後の働き方』第3章は”情報流通と金融”と題し、ブロックチェーン技術とそれがもたらす社会改革について詳しく書いています。ブロックチェーン技術によって、仲介業者がいなくなり、売りたい人と買いたい人を直接繋ぐことが可能になるのではないかと言われています。第4章でもブロックチェーン技術を使ったアーティストと買う人を直接繋ぐ音楽販売プラットフォーム「Ujo Music」について説明しています。

Consensysはブロックチェーンのプラットフォームやサービスを企業向けに提供するスタートアップであり、Ujo Musicの基盤にもなっています。ジョセフ氏は、今後10ー20年の間に、スマートコントラクト(契約及び契約の履行を自動化するシステムのこと)が破壊的な変化をもたらすだろうと話します。仲介業者がなくなるとしたら、どんな仕事がなくなって、代わりにどんな仕事が生まれるのか、これは遠くない未来に起こることなので、今からでも考えておきたいことです。


SXSWの様子

予兆を掴んで10年後を想像しながら生きる


日々の仕事に忙しいと、中々将来、数年後、10年後、20年後どうしていきたいか考えるのを忘れ、もっと目先の事の処理に集中してしまいます。また、慣れ親しんだ環境にいる方が一見楽です。

私たちもかつてはそうでしたが、SXSWがきっかけとはいえ、毎日このままでいいのか、考えずにはいられなくなりました。やりたい仕事がないなら、自分で作ってしまえばいいじゃないかという起業家たちの空気をたっぷり吸い込んで、ついには起業してしまいました。

私たち自身も10年後はどうなっているかわかりません。それくらい自分たちの知らない世界の変化は早く、瞬きする内に様相が変わっています。それを全部追いかけた方がいいとは言いませんが、何となく色んな業界の変化を”感じる”くらいの能力を持っていると、生きるために役に立つと考えています。

そのために、私たちがやっていることは10年後、その先の想像、いや妄想に近い未来予報です。しかし、妄想も馬鹿にできないと最近は思っています。妄想やSFだと言われたものが現実になっていく様子を見て、少し怖いような嬉しいような気持ちになるからです。

ぜひ、この怖いような嬉しいような気持ちを一緒に味わって頂き(笑)、今日からこんな生き方してみようという一歩の後押しができましたら幸いです。

記事:宮川麻衣子(未来予報株式会社)



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