2017年06月30日更新

名画「バベルの塔」に描かれた人数1400人! その人たちの職業を虫眼鏡で調べてみると

上野・東京都美術館で開催されている「バベルの塔」展(2017年7月2日まで)。CMや駅のポスターで、茶色く厳かな雰囲気の塔の絵を見た方も多いのではないでしょうか。

名画好きの私は、この春展示が始まった頃から、もう観たくて観たくて、この巨大な塔にひと目お目にかかりたくて、ウズウズしていましたが、ついに先日鑑賞することができました。

この絵の背景的なところをざっくり解説させていただきますと、今回、展示されている「バベルの塔」は、16世紀のブラバント公国(現在のオランダ)の画家、ピーテル・ブリューゲルが描いたもの。

「バベルの塔」はブリューゲル以外にも多くの画家が題材にしていますが、ブリューゲル自身、現存するもので2作品を描いていることが知られています。バベルはよほど当時の画家魂を揺さぶるテーマだったようですね。

今回展示されているものは、1568年頃に描かれた2作目のほう。日本では24年ぶりの展示とあって注目度が高く、美術館は平日でも賑わっています。

ちなみに"バベル"という言葉は、ヘブライ語で「混乱」や「ごちゃまぜ」を意味する「balal(バラル)」に由来を持つようです。

ご存知と思いますが、バベルは旧約聖書「創世記」に出てくる有名なエピソード。「神の居場所に届くような高い塔作ったれ!」と人間が力を合わせて頑張ったことに神様が激オコ、カオスな状況が生じてそれ以来人類は、住む国々で別々の言語を話すようになりましたとさーーという物語ですね。

しかし、このブリューゲルによる名画、興味深いのは迫力ある塔本体だけではありません。原画で観てもめっちゃ小さいありんこサイズですが、そこに描かれている人々も魅力的なのです。

まず描かれた人の数がすごい。一説によるとその人数は約1400人!(それを数えた人もすごい…)。ところで、そんなに大勢の人たちは、何をしているのでしょう? 鑑賞後なんだか気になったので、購入した図録のオマケとして付いていた原寸大サイズのポスターを虫眼鏡で見てみると…なんとその人たちの多くは「仕事」をしているようです。もちろん塔建設に関わる様々な仕事を。

建設業中心ではありますが、大昔のヨーロッパの人々がどんな仕事をしているか気になったので、「ウォーリーを探せ」なノリで「バベルの塔」の人々の職業リサーチをしてみました。

大昔のいろんな職業が描かれてる。サボってるヤツもいて共感


まずは塔のまわりの様子から見ていきます。 塔の右下には海が広がっていて、そこには約70艘の船が止まっています。ということは…? いるいる! 船を動かす人【航海士】と船の荷を下ろす人【船上員】。

港の様子※付録のポスターを接写しています

ここには入港を審査する関所や水路もあるそうです。また、大きな倉庫と思われる場所には、塔の材料だけでなく、生活の資源も集まっているのではないでしょうか。

今度は塔の真下を見てみましょう。人間だけでなく、羊や鹿もいます。草食べてますね。馬に乗っている人【家畜商】を発見! 塔の中でも馬に乗っている人がいるので、材料を運んだり、移動したりするのに使っている様子がうかがえます。

塔の真下の様子

次は塔の左下を見てみましょう。右側の海とは反対にこちらは平野が広がっています。一番左下には【農家】と思われる人たちが。腕まくりして必死に穴を掘っていますが、なぜ穴を掘っているのでしょう…? 何か埋めるのかな? と思っていたら、その奥にサボっている人発見。完全に寝落ちしてますね。「いるわー、職場に一人は」と妙に親近感が湧くのでよくよく考えてみると、これって私じゃね? このあと穴に埋められないことを祈ります。

左下の様子。穴を掘る人とサボっている人が

続いて塔にいる人たちも見ていきましょう!

まずは塔の右側。クレーンがありますね。ここでは【作業員やクレーン運転士】が材料を塔の上にあげているようです。人力ではありますが、旧約聖書の時代にクレーンがあるとは驚きです。

塔の右側

今度は塔の左側を見てみると、赤と白の筋ができています。これは、【煉瓦工】が塔の上にレンガ(赤色)とアスファルト(白色)を運ぶときに、粉や破片が飛び、筋になったようです。アスファルトの粉を被って、真っ白になってしまっている人たちもいます。歩き方の姿勢が、まるでゾンビのよう。

塔の左側
アスファルトを被って、真っ白になってしまった人たち

一説によると、バベルの塔は石と漆喰を用いる旧約聖書時代のポピュラーな建築技法ではなく、レンガとアスファルトで作るハイテク建築物にしようとしたことから、「最新技術に溺れるな、人間よ」ということで神の怒りを買ったとも言います。

いずれにせよ、この赤と白の帯があることで、バベルの塔の絵に「現在、建設中」のダイナミックな生々しさが生み出されていると思います。それに対比する位置(右上あたり)に不吉な雲が押し寄せていますね。

塔の下から4段目には行列を発見。行列の先には教会と思われる場所があるので、【修道士】の方々がいるのではないかと思われます。タイマツを持っているところを見ると、塔のなかは暗いのでしょうね。まあ、電気ない時代ですから。

塔の下から4段目

ブリューゲル先生、狂ってるわあんたの仕事っぷり



次は、いよいよ花形登場。塔の上のほう、つまり最先端で働く人たちを見てみましょう。うわー…いるわー……と少し引くくらい、うじゃうじゃ人がいます。スカイツリーでも組織のピラミッドでも、高いところに登りたくなるのは古くからの人間の習性なのかもしれません。

しかし、やっぱりここでも人々は作業をしています。塔を立てるために足場を組んで作業している人【とび職】がいるのがわかります。ここに描かれている様々な作業は当時(旧約聖書時代)の建築技法を正確に描写しているそうで、ブリューゲルの勉強熱心さがうかがえます。

塔の最上段。足場が緻密に表現されています

で、塔の最上階を見ると、もはや人間なのか、蟻なのかわからない人たちがいました。下のほうの人たちはあんなに細かく描き分けていたのに…、まさかブリューゲル先生、描くの面倒くさくなった? 飽きちゃった? 

よくよく見ると決めポーズをしている人やすでに塔が完成したかのようにバンザイしている人かと思われるのですが、ブリューゲルはテッペンでエラそーにしたがる人種に興味がなかったのでは? と考えるとちょっと面白い。

彼に関する記録は少ないながらも、「実はお上にモノ申す反骨の風刺画家だった?」という説もあるからです。ま、この絵はビミョーに下目から見上げる遠近法的な構図になってる気もして、その関係なのかもしれませんが、あえてだったらスゴイですね。

左側:腰に手を当てて決めポーズしてるように見える人、右側:完成したかのようにバンザイをして喜んでいるように見える人

今回、1枚の絵(原寸大ポスターですが)を虫眼鏡でじっくり見て、感じたこと。ブリューゲル先生、あんた狂ってるわ。

1400人全員をチェックできたわけではないのですが、人々の服装やそれぞれの動作が細かく描き分けられていて、狂気のようなものさえ感じます。そして何回見ても飽きません。それゆえに制作から450年をへても人々の注目を集め続ける"不朽の名作"とされているのでしょう。

私も美術館に足を運ぶことで初めてわかったのですが、この絵の大きさは59.9×74.6センチ。A4サイズ約7枚分という、実際にはそれほど大きくないサイズなのです。

そして、こんな旧約聖書の時代(成立は紀元前5世紀から4世紀とも言われる)から人間は仕事をし続けてきたのだなあ、ハイテクを開発し活用したがっていたのだなあ、一生懸命テッペン目指してたんだなあ、などと思うとジワジワくるものがあります。ここにはやはり人類の業のようなものが描かれているのではないでしょうか?

上野の東京都美術館で開催中のブリューゲル展もあと2日(7月2日まで)。現物は滅多にお目にかかれない代物ですので、興味ある方はこの土日に足を運んでみるのも良いかもしれません。

記事:河口茜(シゴトゴト編集部)

(参考記事)
★【公式】 ブリューゲル「バベルの塔」展
★ブリューゲル「バベルの塔」展 公式図録
★バベルの塔 - Wikipedia
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